屋根断熱で快適な住まいを実現!工法別のメリットやデメリット、補助金について解説します
執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)
執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)
屋根断熱には、大きく分けて屋根材自体に断熱効果を持たせた方法(外張り断熱)、天井に断熱材を敷き詰める方法(天井断熱による通気工法)、屋根に断熱材を入れる方法(屋根断熱)の3種類があり、それぞれ費用や効果が違います。
この記事では、屋根断熱の種類やそれぞれの強み・弱み、断熱材の特徴などについて詳しく解説します。
屋根断熱とは
屋根断熱とは、建物の屋根部分に断熱材を配置し、外部の熱を遮断して室内の温度を快適に保つための方法です。断熱材を屋根に設置することで、夏は外部の熱が室内に伝わりにくく、冬は室内の暖かさが外に逃げにくくなります。これにより冷暖房の効率が向上し、省エネルギー効果や快適な室内環境が得られます。
屋根断熱の施工方法には、屋根の上側から行う「外張り断熱」と、屋根の内部(例えば天井裏)から行う「内断熱」があります。使用される断熱材も、グラスウール、発泡ウレタン、セルロースファイバーなどさまざまです。
屋根断熱の工法の種類
屋根断熱の工法には、屋根材自体に断熱効果を持たせた方法(外張り断熱)、天井に断熱材を敷き詰める方法(天井断熱による通気工法)、屋根に断熱材を入れる方法(屋根断熱)があります。
外張り断熱は熱を家に入れにくくする効果が高く、断熱性能に優れていますが、費用は比較的高くなります。天井断熱は施工が比較的容易で費用を抑えられますが、天井裏の適切な換気が重要です。屋根断熱は居住空間を広く確保できる利点がありますが、費用は高くなります。ただし、適切な断熱設計により、天井高による温度むらを最小限に抑えることができます。
どの工法を選ぶかは、予算、建物の構造、地域の気候などを総合的に考慮する必要があります。また、断熱効果を最大限に発揮するためには、適切な設計と施工が重要です。
屋根断熱工法の種類
屋根断熱の工法別の特徴
屋根断熱の三つの工法について、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
一つ目は、屋根材の裏側に断熱材を直接取り付ける外張り断熱です。この方法は、屋根材が太陽光で熱くなるのを防ぎ、家全体の温度上昇を抑える効果が高いのが特徴です。特に、夏場の暑さ対策に有効です。また、屋根の構造材を熱の影響から守るため、家の寿命を延ばすことにも繋がります。しかし、屋根材と断熱材を一体で施工するため、費用が高くなる傾向があります。さらに、屋根の形状が複雑な場合、施工が難しい場合もあります。
二つ目は、天井裏に断熱材を敷き詰める天井断熱です。天井裏に断熱材を施工することで、居住空間と天井裏の温度差を小さくし、冬場の暖房効率を高める効果が期待できます。施工が比較的簡単で費用も抑えられるため、多くの住宅で採用されています。天井に穴を開けるだけで施工できる場合もあり、工事期間も短縮できます。しかし、夏場は屋根材が太陽光で熱くなり、その熱が天井裏に伝わるため、断熱効果が外張り断熱に比べて劣る場合があります。また、天井裏に十分な空間がない場合は、施工が難しい場合もあります。
三つ目は、屋根裏の空間全体に断熱材を施工する屋根断熱です。屋根断熱は、屋根裏全体を断熱材で覆うため、外張り断熱と天井断熱の両方のメリットを併せ持つ断熱方法と言えます。夏場は屋根材からの熱を遮断し、冬場は居住空間からの熱の流出を防ぎます。屋根裏に十分な空間が必要となりますが、断熱効果を高め、快適な居住空間を実現することができます。費用は天井断熱よりも高くなる傾向がありますが、外張り断熱よりは安価に施工できる場合が多いです。
このように、屋根断熱にはそれぞれ異なる特徴があります。家の構造や築年数、周辺環境、予算などを考慮し、最適な断熱方法を選ぶことが大切です。
屋根断熱の工法別メリットとデメリット
方法 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
外張り断熱 | 屋根材の裏側に断熱材を直接設置 | 夏場の暑さ対策に効果的、屋根の寿命を延ばす | 費用が高額、複雑な屋根形状への施工が困難 |
天井断熱 | 天井裏に断熱材を敷き詰める | 冬場の暖房効率向上。施工がしやすい、費用が安価 工期が短い | 夏場の断熱効果が低い、天井裏の空間不足で施工不可の場合あり |
屋根断熱 | 屋根裏の空間全体に断熱材を施工 | 夏場・冬場どちらにも効果的、高い断熱効果 | 天井断熱より高額、 屋根裏に十分な空間が必要 |
外張り断熱の特徴
外張り断熱は、建物の外側に断熱材を施工する工法です。屋根や壁の外側に断熱材を隙間なく貼り付けることで、まるで建物を魔法瓶のように包み込み高い断熱効果を発揮します。
まず、外張り断熱の大きな利点の一つは、夏涼しく、冬暖かい快適な居住空間を実現できることです。屋根の表面に断熱材を施工することで、夏の強い日差しを遮り、室内の温度上昇を大きく抑えることができます。冬は、室内の熱が外に逃げるのを防ぎ、暖房効率を高めます。そのため、冷暖房費の節約にも繋がり、家計にも優しいと言えます。
また、外張り断熱は、結露の発生を抑える効果も期待できます。断熱材を外側に設置することで、壁や屋根の内側表面の温度が外気温の影響を受けにくくなり、結露が発生しにくい環境を作ります。結露は建物の劣化を早める原因となるため、これを防ぐことは建物の寿命を延ばすことにも繋がります。
さらに、外張り断熱は、建物の構造体自体を保護する効果も持ちます。断熱材が外部からの温度変化や雨風から建物を守るため、建物の劣化を遅らせ、建物の寿命を延ばすことに貢献します。
一方で、外張り断熱には欠点も存在します。特に、初期費用が高額になりやすい点が挙げられます。外壁や屋根全体を覆う必要があるため、材料費や施工費がかさみ、内断熱に比べて初期費用は高くなります。また、施工には高い技術が必要となるため、信頼できる施工業者を選ぶことが重要です。
さらに、外張り断熱は、建物の外側に断熱材を施工するため、既存の建物に後から施工する場合、窓やドアの位置調整が必要となる場合があります。そのため、新築時や大規模なリフォーム時に検討するのが一般的です。
このように、外張り断熱には利点と欠点の両方があります。建物の状況や予算、希望する効果などを総合的に考慮し、最適な断熱方法を選択することが大切です。
外張り断熱のメリットとデメリット
項目 | 内容 |
---|---|
工法 | 建物の外側に断熱材を施工 |
メリット | 夏涼しくて冬暖かい、居住空間の実現、冷暖房費の節約、結露の発生抑制、建物の構造体保護、寿命延長 |
デメリット | 初期費用が高額、高い施工技術が必要、窓やドアの位置調整が必要な場合あり、新築時や大規模リフォーム時が最適 |
その他 | 建物の状況、予算、希望する効果を総合的に考慮し最適な断熱方法を選択 |
天井断熱の特徴
家の天井を断熱することは、快適な暮らしを送る上で多くの利点をもたらします。
まず夏場は太陽の熱が家の中に入ってくるのを防ぎ、涼しく過ごすことができます。強い日差しによって屋根裏の温度が上昇しても、断熱材が熱を遮断するため、室内の温度上昇を抑える効果があります。
また、冬場は室内の暖かさを外に逃がさず、暖房効率を高めることができます。暖房で温められた空気は上昇する性質があるため、天井が断熱されていないと、せっかく温めた空気が屋根裏から逃げてしまいます。天井断熱をすることで、この熱の流出を防ぎ、暖房費の節約にも繋がります。
天井断熱は、比較的手軽に施工できるのも利点です。天井裏に断熱材を敷き詰めるだけなので、大掛かりな工事は必要なく、費用も抑えられます。そのため、既に住んでいる家でも比較的簡単に断熱リフォームが可能です。
しかし、天井断熱にはいくつか注意すべき点もあります。最も重要なのは屋根裏の換気です。断熱材によって天井が密閉されると、湿気がこもりやすくなります。この湿気が断熱材に吸収されると、断熱性能が低下するだけでなく、木材の腐朽やカビの発生にも繋がります。そのため、屋根裏に適切な換気口を設置し、定期的な点検と清掃を行う必要があります。
換気口が詰まっていると、湿気が排出されず、思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。また、断熱材の種類によっては、経年劣化によって性能が低下するものもあります。定期的に点検し、必要に応じて交換することが大切です。天井断熱は快適な住環境を作る上で有効な手段ですが、適切な施工と管理があってこそ、その効果を最大限に発揮することができます。
天井断熱のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
夏は涼しくて冬は暖かい、冷暖房効率向上、光熱費節約、比較的簡単な施工、費用も抑えられる | 屋根裏の換気が重要、換気不足による湿気やカビや木材腐朽のリスク、断熱材の経年劣化 |
屋根断熱の特徴
屋根断熱は、屋根のすぐ下に断熱材を敷き詰める工法です。屋根裏部屋全体を覆うように施工するため、屋根裏を収納や趣味の部屋として活用したい場合に最適です。屋根裏の空間全体が断熱材で包まれるため、高い断熱効果が得られます。夏は強い日差しによる熱の侵入を防ぎ、冬は室内の暖かさを逃がしません。これにより、一年を通して快適な室温を保ち、光熱費の節約にも繋がります。
しかし、屋根断熱には費用面でのデメリットも存在します。天井断熱と比べると、断熱材の使用量が多くなるため、材料費だけでなく施工費も高額になる傾向があります。屋根の形状が複雑な場合、施工の難易度が上がり、費用がさらに増すことも考えられます。また、屋根の構造によっては、屋根断熱が施工できないケースもありますので、事前に専門家による診断が必要です。
さらに、屋根断熱は天井断熱に比べて天井高が高くなるため、部屋の容積が増加し、冷暖房効率が低下する可能性があります。冷暖房効率の低下を防ぐためには、より強力な冷暖房機器が必要となる場合もあり、初期費用だけでなくランニングコストの増加にも繋がる可能性があります。そのため、屋根断熱を検討する際には、断熱効果による光熱費の削減効果と、冷暖房費の増加を比較検討し、総合的に判断することが重要です。適切な性能の空調設備を選ぶことも、快適な暮らしを送る上で欠かせません。専門家と相談し、家の構造や家族構成、生活様式に合った最適な断熱方法を選びましょう。
屋根断熱のメリットとデメリット
項目 | 内容 |
---|---|
工法 | 屋根のすぐ下に断熱材を敷き詰める |
メリット | 屋根裏部屋を有効活用できる、高い断熱効果(夏は涼しく、冬は暖かい)、光熱費の節約 |
デメリット | 費用が高い(材料費、施工費)、 屋根形状によっては施工不可の場合あり、天井高が高くなり冷暖房効率が低下する可能性がある、冷暖房費増加の可能性 |
注意点 | 専門家による事前の診断が必要、断熱効果と冷暖房費増加の比較検討が必要、適切な性能の空調設備を選ぶ、専門家と相談し最適な方法を選ぶ |
最適な断熱方法の選定
住まいの快適さや省エネルギー性を高める上で、断熱は極めて重要です。最適な断熱方法を選ぶことは、光熱費の節約だけでなく、健康で快適な暮らしを実現するためにも欠かせません。一口に断熱といっても、様々な種類があり、それぞれに特徴があります。どの方法が最適かは、建物の構造や気候、予算、そしてどのような暮らしを求めるかによって大きく変わってきます。
新築の場合、設計段階から断熱性能をしっかりと考慮することで、より効果的な断熱対策を施すことが可能です。壁や屋根、床など、建物のあらゆる部分に最適な断熱材を選び、隙間なく施工することで、高い断熱性能を確保できます。断熱材の種類も、グラスウール、セルロースファイバー、ロックウールなど多岐に渡り、それぞれ断熱性能や防火性能、防音性能、価格などが異なります。専門家と相談し、建物の構造や気候条件に合った最適な材料を選ぶことが大切です。
リフォームの場合は、既存の建物の構造や状況に合わせた断熱方法を選ぶ必要があります。壁の中に断熱材を入れる内断熱、壁の外側に断熱材を施工する外断熱、屋根裏や床下に断熱材を敷き詰める方法など、様々な選択肢があります。既存の建物の状態を綿密に調査し、どの方法が最も効果的かつ費用対効果が高いかを専門家と検討しましょう。場合によっては、窓を複層ガラスに交換したり、断熱サッシにすることで、より高い断熱効果を得られることもあります。
断熱性能を高めることは、夏は涼しく、冬は暖かく、一年を通して快適な室温を保つことにつながります。冷暖房の使用頻度を減らすことができるため、エネルギー消費を抑え、光熱費を大幅に削減できます。また、結露の発生も抑制できるため、カビやダニの発生を防ぎ、健康的な住環境を維持することにも繋がります。さらに、断熱性能の高い家は資産価値も高まるため、長期的な視点からも重要な投資と言えるでしょう。最適な断熱方法を選び、快適で省エネルギーな暮らしを実現しましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
断熱の重要性 | 快適さ、省エネルギー性向上、光熱費節約、健康で快適な暮らし |
新築時の断熱 | 設計段階からの考慮、壁・屋根・床への最適な断熱材選択、隙間のない施工、グラスウール/セルロースファイバー/ロックウールなど種類豊富 |
リフォーム時の断熱 | 既存構造に合わせた方法選択、内断熱/外断熱/屋根裏・床下断熱、窓の複層ガラス化/断熱サッシ化 |
断熱効果 | 夏涼しく冬暖かい、年間を通して快適な室温、冷暖房使用頻度減少、光熱費削減、結露抑制、カビ・ダニ発生防止、健康環境維持、資産価値向上 |
断熱材の種類
家の温かさを保つには、断熱材選びが重要です。断熱材には様々な種類があり、それぞれ特徴が違います。大きく分けて、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどが挙げられます。
まず、グラスウールは、ガラスを繊維状にしたものです。価格が安く、施工しやすいのがメリットです。ホームセンターなどでも手軽に入手でき、DIYでも扱いやすい素材です。しかし、水を吸いやすい性質のため、壁の中に湿気がこもらないよう、防湿シートの施工をしっかり行う必要があります。
次に、ロックウールは、岩石を高温で溶かして繊維状にしたものです。耐火性、遮音性に優れており、火災の際にも延焼を防ぐ効果が期待できます。また、グラスウールに比べて密度が高いため、音を吸収しやすく、静かな室内環境を実現できます。ただし、グラスウールよりも価格が高くなる傾向があります。
最後に、セルロースファイバーは、新聞紙などの古紙を再利用した環境に優しい断熱材です。断熱性能が高く、夏は涼しく、冬は暖かい室内環境を実現できます。また、吸音性にも優れているため、静かな住まい作りに貢献します。しかし、施工には専用の機械が必要となる場合があり、施工費用が高くなることがあります。
このように、断熱材にはそれぞれメリット、デメリットがあります。家の構造や予算、求める性能を考慮し、最適な断熱材を選びましょう。専門の業者に相談することで、より適切なアドバイスをもらえます。家の快適さを左右する重要な要素ですので、じっくりと検討することをお勧めします。
断熱材の種類別・メリットとデメリット
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
グラスウール | 価格が安い、施工しやすい、ホームセンターなどで入手可能 | 水を吸いやすい、防湿シートの施工が必要 |
ロックウール | 耐火性、遮音性に優れている、延焼を防ぐ効果 | グラスウールより価格が高い |
セルロースファイバー | 断熱性能が高い、夏は涼しく冬は暖かい、吸音性に優れている、環境に優しい | 施工に専用の機械が必要な場合があり、施工費用が高い |
屋根断熱リフォームで活用できる補助金
国土交通省による子育てエコホーム支援事業制度を活用する事で、屋根断熱リフォームに対する補助金を受ける事ができる場合があります。
こどもエコすまい支援事業(2024年度)
補助事業 (補助対象基準) | 種別 | 補助金額(戸) | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|
| 外壁 | 屋根・天井 | 床(基礎) | ||
子育てエコホーム 【詳細】 | 全体断熱 | 151,000~ 112,000円 | 54,000~ 40,000円 | 96,000~ 72,000円 | ・全体、部分によらず各箇所1回まで ・断熱材の性能(断熱材区分)、断熱材使用量、建物属性により、補助額が変わります |
部分断熱 | 75,000~ 56,000円 | 27,000~ 20,000円 | 48,000~ 36,000円 |
重要な注意点
- 補助金制度は年度や地域により内容が変更される可能性があります
- 申請期限や予算枠には制限があります
- 工事前の申請が必要な場合があります
- 自治体独自の上乗せ補助がある場合もあります
まとめ
住まいを快適にするための工夫として、屋根断熱を取り入れるという選択肢があります。
主には3種類の工法がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。また、工事が大規模になるため新築やフルリノベーションのタイミングでしか取り入れる事ができない工事もあります。
屋根断熱を検討されている方は、ベストな選択ができるように、断熱工事の経験や実績が豊富な工務店に相談してみる事をお勧めします。
この記事の監修者
杉山幸治(株式会社SOWAKA)
1977年生まれの瀬戸市育ち。建築工学科を卒業後ゼネコンに入社し、ビルやマンション建築の現場監督からはじまり、気付けば業歴27年。
20代はコンクリートと鉄骨に情熱を注ぎながら資格試験の勉強に没頭し、30代はコンクリートの社寺建築と木造での増築という難易度の高い現場などを経験しているうちに、どんな構造でもディレクションができるようになりました。中古住宅のリノベーションを軸に理想の住まいづくりをする会社の責任者として活動しています。
リノベーション事例
名古屋市内を中心に、愛知県全域で多数のリノベーションの事例があります。
是非ご覧ください。
株式会社SOWAKA
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