重量鉄骨造のリノベーションを考えよう│メリットや要注意ポイントを解説

執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

リノベーションを考えているみなさまは、一度は『木造』や『鉄骨造』といったワードを聞いたことがあるのではないでしょうか。建造物の骨組みとなる部分が、木で作られている建物を『木造』、鉄骨で作られている建物を『鉄骨造』と呼びます。

この記事では、鉄骨造のひとつ『重量鉄骨造』という構造にスポットを当てて、特徴や注意したいポイントなどを解説します。

この記事のポイント

  • 重量鉄骨造は柱と梁で建物を支えているため、自由に間取りを変更できるフルリノベーションに向いています
  • 鉄骨造は外気温の影響を受けやすいので、しっかりとした断熱対策が必須になります。
  • 鉄骨の寿命を延ばす錆び対策もしっかりと考えましょう。

重量鉄骨造とは?

建物の構造を支える骨組みに鉄骨を使用した建築方法を「鉄骨造」といい、使用する鋼材の厚さによって「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨造」の2種類に分類されます。

【重量鉄骨造の定義】
厚さ6mm以上の鉄骨を使用した建築物を重量鉄骨造と呼びます。対して、6mm未満の鉄骨を使用したものは軽量鉄骨造となります。重量鉄骨造は鋼材が厚いため、建物全体の強度が高く、優れた構造性能を発揮します。

【主な特徴】

  • 高い耐震性:地震の揺れに強く、建物の安全性が高い
  • 優れた耐久性:適切なメンテナンスで長期使用が可能
  • 確かな耐火性:火災に対する耐性が高い
  • 自由な空間設計:太い柱が少なくても広い空間が確保できる
  • 工期の短縮:工場での事前製作が可能で、現場での組み立てが速い

【用途と活用例】
重量鉄骨造は、一般的な住宅から大規模建築まで幅広く採用されています。

  • 戸建て住宅(特に3階建て以上)
  • マンションやオフィスビル
  • 商業施設(ショッピングモール、スーパー)
  • 工場や倉庫
  • 体育館などの公共施設

大型商業施設などで見られる広々とした店内空間は、重量鉄骨造だからこそ実現できる特徴的な例といえます。柱の数を最小限に抑えながら、安全で快適な大空間を作り出すことができます。

重量鉄骨造の魅力

重量鉄骨造の建物には、耐震性の高さや間取りの自由度の高さなど色々なメリットがあります。

強度が強く耐震性に優れている

重量鉄骨造で使われる鉄骨には厚みがあるため、柱や梁自体も太く丈夫な骨組みになります。その強さは地震に耐える力にも繋がり、耐震性が高い建物にすることができます。

また、鉄骨は地震の際に「しなる」ことで地震のエネルギーを吸収し、建物の揺れを少なくしてくれるという特徴もあります。いつ大地震がきてもおかしくない地震大国の日本にとって、地震に強い家というのは安心感があり重要なポイントになりますね。

間取りの自由度が高く、大空間を作ることができる

丈夫な柱と梁で建物を支えている重量鉄骨造。そのため、リノベーションを計画する際には、今ある壁をなくして広々としたリビングを作るというように、自由な間取り変更ができます

もちろん壁だけでなく、天井を抜いて吹き抜けを作ることや、壁一面の大きな窓を設置することも可能です。重量鉄骨造は、特に家全体のフルリノベーションを考えている方にぴったりの構造体であると言えます。

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重量鉄骨造の耐用年数は?

建造物には、法定耐用年数というものが設定されています。

構造別耐用年数一覧

構造・用途耐用年数
木造22年
軽量鉄骨造(鉄骨の厚みが3mm以下)19年
軽量鉄骨造(鉄骨の厚みが3mm以上4mm以下)27年
鉄骨造(鉄骨の厚みが4mm以上)34年
鉄筋コンクリート造47年
国税庁ホームページより引用(耐用年数、建物/建物付属備品)

まめちしき 『法定耐用年数』とは?

建物は建てられた年から年月が経つことで劣化し、価値が減少していきます。

価値が変化していく建物の固定資産税を、毎年一定額や一定割合で分割して費用計上することを、『減価償却』と言います。

その減価償却を計算する為に用いられる数字が、『法定耐用年数』

法定年数で固定資産税を計算することで、その年の建物の価値を計算していくのです。

上表を見ていただくと、重量鉄骨は厚さ6mm以上の鉄骨を使用しているため、法定耐用年数は34年と定められているのが分かります。

ただ、気を付けていただきたいことは、法定耐用年数は資産価値を計算するためのものであり、建物の寿命ではないということ。しっかりと定期的なメンテナンスを行っている重量鉄骨造の物件は、70~100年程度は使用できると考えられています。

これから物件を探すなら?

しっかりとメンテナンスがされていれば、人間の寿命よりも長い時間、住み続けることができる重量鉄骨の建物。一方で資産価値は34年でなくなってしまうため、築30~35年程の中古物件はお値打ちに購入することができます。

低コストで自由なリノベーションをするなら、築30~35年の重量鉄骨造を探すのがおすすめです!

しっかりと計画したい断熱対策

重量鉄骨造で使われる鉄骨には熱を伝えやすい性質があり、外気温の影響を受けやすいというデメリットがあります。そのため、重量鉄骨造のリノベーションを計画する際には、しっかりと断熱対策を考えていただくことがおすすめです。

断熱対策にはどんなものがあるの?

➀窓を断熱リノベーションする

「窓」は建物周りの建材の中で、壁や屋根と比べても最も薄い部分で、夏は70%の熱、冬は58%もの冷気が出入りすると言われています。そのため、窓の断熱リノベは、家全体の断熱性能を大きく向上させてくれます。

方法としては、窓ガラスやサッシを断熱性能のある物に変更したり、内窓を付けるといった方法が一般的です。

関連記事:断熱サッシで省エネリフォームを実現して、快適な住まいへ!

➁壁、天井、床を断熱リノベーションする

外気に触れる壁面や、外気温を伝えやすい床・天井に空気を多く含んだ断熱材を注入していく断熱リノベーション。外気温から受ける影響を最小限にとどめつつ、室内の暖気が外に逃げるのを防いでくれます。

方法や使う断熱材も様々あるので、ご自身の住まいに一番合う方法を専門家としっかり打ち合せましょう。

関連記事:断熱リノベーションの重要性と効果:名古屋市の実例から学ぶ快適な住まい作り

断熱性能を上げることができれば、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住まいが実現できるだけでなく、冷暖房費を抑えることができ光熱費が安くなるといった節約効果も期待できます

さらには、結露も防いでくれて家の寿命も長くすることに繋がる場合もあります

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もっと知りたい!断熱の話

重量鉄骨造の寿命を延ばす錆び対策

鉄が水に濡れて錆びてしまっているのを目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。鉄は錆びることによって性質が変わり、強度が弱くなってしまいます

地震があった際の事を考えてみましょう。鉄骨造が地震に強いと言われるのは、揺れた時に鉄がしなりながら揺れを吸収して、安定させてくれるからなのです。それが錆びた鉄ではどうでしょうか?

錆びて弱くなった部分がポキッと折れてしまい、建物の骨組みごと倒壊してしまう危険があるのです。

重量鉄骨造の錆の原因は、ほとんどが外壁材の劣化によって起こる水の浸み込みや、屋根からの雨漏りとなっています。外壁塗装や屋根の塗り替えなど、お金のかかる部分ではありますが、定期的なメンテナンスをしっかりとして、安全に長く住める住まいを維持していきたいですね

また、中古住宅を購入する際も、しっかりとメンテナンスされているかどうかを確認することが大切です。例え重量鉄骨造を安く購入できたとしても、鉄骨の修繕・防水工事を行う必要がある物件となると、高額な費用がかかってしまう可能性もあることを覚えておきましょう

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さらに詳しく『鉄骨造』について知りたい方

「株式会社SOWAKA」現場・設計担当の杉山が、プロの視点から『鉄骨造』に関しての説明をしているYOUTUBEをご紹介。『軽量鉄骨』と『重量鉄骨』を比較しながら、リノベーションに向いている物件のアドバイスをしています。

きっと住まいづくりの参考になるかと思います。ご興味があればぜひご視聴ください。

この記事の監修者

sugiyama

杉山幸治(株式会社SOWAKA)

一級建築施工管理技士

1977年生まれの瀬戸市育ち。建築工学科を卒業後ゼネコンに入社し、ビルやマンション建築の現場監督からはじまり、気付けば業歴27年。
20代はコンクリートと鉄骨に情熱を注ぎながら資格試験の勉強に没頭し、30代はコンクリートの社寺建築と木造での増築という難易度の高い現場などを経験しているうちに、どんな構造でもディレクションができるようになりました。中古住宅のリノベーションを軸に理想の住まいづくりをする会社の責任者として活動しています。

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