ヒートショック対策でリスクを軽減!安心で快適な住まいへ

執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

ヒートショック対策でリスクを軽減!安心で快適な住まいへ

寒い冬場、温かい居間から寒い脱衣所や浴室への移動は、体に大きな負担をかけます。急激な温度変化による血圧の変動、いわゆる「ヒートショック」は、特に高齢者にとって命に関わる危険性をはらんでいます。

しかし、浴室暖房の設置や断熱改修、そして日々の小さな工夫でこのリスクを大幅に軽減することができます。

家族みんなが安心して暮らせるよう、ヒートショックへの対策を検討してみましょう。快適な住まいは、健康な暮らしの第一歩です。

ヒートショックとは?

ヒートショックとは、寒暖の急激な温度差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に重大な負担がかかる危険な状態です。特に冬場、暖かい部屋から寒い脱衣所に移動したり、熱い湯船から出たりする際に起こりやすく、めまいや不整脈、最悪の場合は心筋梗塞や脳梗塞につながる可能性があります。

高齢者や高血圧の人は特にリスクが高く、予防には家全体の温度差を小さくすることが重要です。断熱性能を高めたり、脱衣所に暖房を設置したりするなどの対策が効果的です。

温度差が引き起こす危険と対策とは?

【健康への影響】
暖かい部屋から急に寒い場所に移動すると、血管が縮み、血圧が急上昇します。この急激な血圧の変化が、脳出血や脳梗塞、場合によっては心臓発作を引き起こす可能性があります。居間と浴室の温度差が10度以上あると、ヒートショックの危険性が格段に高まると言われており、冬場に浴室で亡くなる事故の多くは、このヒートショックが原因だと考えられています。

【暖房による対策】
ヒートショックの危険性を減らすためには、家の中の温度差を少なくすることが重要です。効果的な対策の一つとして、浴室暖房の設置が挙げられます。浴室暖房は、入浴前に浴室を暖めておくことで、急激な温度変化による体の負担を軽減します。また、脱衣所に暖房器具を設置するのも有効です。脱衣所も浴室と同様に寒い場所なので、暖房器具を設置することでヒートショックの危険性を抑えることができます。

【断熱改修の重要性】
さらに、床や壁、窓などの断熱改修も効果的です。断熱性を高めることで、家全体の温度を一定に保ちやすくなり、温度差による影響を最小限に抑えることができます。床暖房を設置すれば、足元から部屋全体を暖めることができ、より快適な環境を作ることができます。

必要に応じて適切なリフォームを行うことで、ヒートショックの危険を大幅に減らすことが可能です。

浴室の暖房設備について

浴室暖房の設置は、ヒートショック対策として最も効果的な方法の一つです。

浴室暖房があれば、入浴前に浴室全体を暖めておくことができます。つまり、温かい居間から寒い浴室への移動による急激な温度変化を避けられるため、ヒートショックのリスクを大幅に減らすことができるのです。

浴室暖房には、さまざまな種類があります。天井に埋め込むタイプは、見た目もすっきりとしており、限られた空間でも設置しやすいのが利点です。壁に取り付けるタイプは、設置場所の自由度が高く、自分の使いやすい位置に設置できるのが魅力です。最近では、換気機能と乾燥機能を備えた浴室暖房乾燥機も人気を集めています。このタイプは、入浴後の湿気を素早く除去してくれるので、カビの発生を抑え、浴室を清潔に保つのに役立ちます。毎日のお掃除の手間も省け、快適な入浴環境を保つことができるでしょう。

このように、浴室暖房はヒートショック対策だけでなく、カビ防止や快適な入浴環境を実現するためにも大変有効です。設置場所やご自身の生活スタイルに合わせて、最適なタイプの浴室暖房を選び、より安全で快適なバスタイムを過ごしましょう。

浴室暖房のメリット種類説明
・ヒートショック対策
・カビ防止
・快適な入浴環境
天井埋め込みタイプ見た目すっきり、省スペース
壁掛けタイプ設置場所の自由度が高い
浴室暖房乾燥機換気・乾燥機能付き、カビ発生抑制、掃除の手間軽減

脱衣所の暖房について

引用元:MODERN DECO

ヒートショックは、浴室だけでなく脱衣所でも発生しやすいです。服を脱ぐときに冷気にさらされることで、体が大きな負担を感じてしまいます。それを防ぐためには、脱衣所にも暖房を設置し、浴室との温度差を小さくすることが大切です。

以下に、脱衣所や浴室への設置に適した暖房器具の種類や特徴をご紹介します。

【暖房器具の種類と特徴】
・セラミックファンヒーター:
脱衣所に適した暖房器具には様々な種類があります。場所を取らない小型のセラミックファンヒーターは、手軽に暖かさを得られます。電源を入れてすぐに温風が吹き出すので、入浴前に短時間だけ使いたい場合にも便利です。

・壁掛け式暖房器具:壁に設置するタイプの暖房器具も、空間を広く使えるため脱衣所に向いています。天井付近に取り付けることで、足元を広く使えるだけでなく、小さなお子さんやペットがいる家庭でも安心して使用できます。

・床暖房:床暖房は足元からじんわりと暖めるので、冷えやすい足先も温かく、快適な入浴環境を作ることができます。設置費用は他の暖房器具に比べて高額になりますが、一度設置すれば長く使えるので、長い目で見てお得と言えるでしょう。

【暖房器具の選び方とポイント】
脱衣所の広さや家族構成、予算に合わせて最適な暖房器具を選びましょう。小さなお子さんがいる家庭では、安全対策が施された暖房器具を選ぶことが大切です。また、ご高齢の方がいる場合は、操作が簡単な暖房器具を選ぶと良いでしょう。暖房器具を設置することで、冬場の入浴時の安全性を高めるだけでなく、小さなお子さんからご高齢の方まで、家族みんなが快適に使える入浴環境を作ることができます。

快適なバスタイムは、一日の疲れを癒やし、心身ともに健康な状態を保つために欠かせません。浴室だけでなく脱衣所も暖かくすることで、より安全性の高い状態を保つことが可能になります。

暖房器具の種類メリットデメリットおすすめする人
小型セラミックファンヒーター場所を取らない、手軽に暖かさを得られる、電源を入れてすぐに温風が出る広範囲に使うには非効率入浴前に短時間だけ使いたい場合
壁掛け式暖房器具空間を広く使える、足元を広く使える、小さなお子さんやペットがいる家庭でも安全温まるまでに少し時間がかかる、電気代が高め小さなお子さんやペットがいる家庭
床暖房足元からじんわり暖める、冷えやすい足先も温かい設置費用が高い快適な入浴環境を求める人

家全体を一定の温度に保つ暖房システムについて

冬場の急激な温度変化による健康への影響を心配する声は多く聞かれます。特に、高齢者や持病のある方にとって、この温度差は深刻な事態を招く危険性があります。そこで、家全体を一定の温度に保つ暖房システムを導入して、健康で快適な暮らしを実現する方も増えて来つつあります。

以下に、家全体を一定の温度に保つことができる暖房器具の種類や特徴をご紹介します。

【セントラルヒーティング】
一つ目の方法は、セントラルヒーティングです。これは、家の中央に設置したボイラーなどで温水を作り、各部屋に設置した暖房器具に温水を循環させることで、家全体を均一に暖めることができます。このシステムの利点は、各部屋の温度差を少なくし、急激な温度変化による体への負担を軽減できることです。また、燃料の種類も様々で、環境や費用に合わせて選ぶことができます。

【床暖房】
二つ目の方法は、床暖房です。これは、床下に温水を通す配管を設置し、床全体を暖めることで、足元からじんわりと温かさを感じることができます。床暖房のメリットは、部屋全体を優しく暖めることができ、乾燥しにくいという点です。また、温風による埃の舞い上がりも抑えられ、空気もきれいになります。

これらの暖房システムは、高断熱・高気密な住宅と組み合わせることで、さらに効果を発揮します。家の断熱性能を高め、気密性を向上させることで、暖房効率が上がり、光熱費の削減にもつながります。初期費用は高額になる場合もありますが、長期的に見ると、健康と快適さを維持するための価値ある投資と言えるでしょう。

家族全員が安心して快適に過ごせる住環境を実現するために、家全体の暖房システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

暖房システム概要メリットデメリット
セントラルヒーティング家の中央に設置したボイラーなどで温水を作り、各部屋に設置した暖房器具に温水を循環させる。各部屋の温度差を少なくし、急激な温度変化による体への負担を軽減できる。燃料の種類も様々で、環境や費用に合わせて選ぶことができる。初期費用が高額になる場合がある。
床暖房床下に温水を通す配管を設置し、床全体を暖める。部屋全体を優しく暖めることができ、乾燥しにくい。温風による埃の舞い上がりも抑えられ、空気もきれいになる。初期費用が高額になる場合がある。

家全体の断熱性・気密性の向上

断熱材

家の性能を上げることは、快適な暮らしを送る上でとても大切です。特に、急激な温度変化による体への負担、いわゆるヒートショック対策として、家の断熱性と気密性を高めることは重要です。

断熱性を高めるということは、外の冷たい空気を家の中に入りにくくし、家の中の暖かい空気を外に逃がしにくくすることです。壁や天井、床などに断熱材をきちんと入れることで、冬は暖かく、夏は涼しい、過ごしやすい家になります。昔ながらの家は断熱材が薄かったり、入っていなかったりする場合も多いので、リフォームで新しい断熱材を入れることで、より快適な暮らしを実現できます。

断熱材の種類も様々ですので、予算や家の構造に合わせて最適なものを選ぶと良いでしょう。 気密性を高めるということは、家の隙間をなくし、すきま風を防ぐことです。窓やドアのゴムパッキンを新しいものに取り替えたり、壁や床のわずかな隙間を専用の材料で埋めることで、気密性を上げることができます。

気密性を高めることで、家の中の温度が一定に保たれやすくなり、急激な温度変化を防ぐことができます。また、外からのほこりや花粉の侵入も防ぐことができるので、アレルギー対策にも繋がります。 断熱性と気密性を高めることで、暖房や冷房の効率も上がり、光熱費の節約にもなります。

冬は暖房で温めた空気を逃しにくく、夏は冷房で冷やした空気を保ちやすくなるため、無駄なエネルギーを使わずに済みます。初期費用はかかりますが、長い目で見ると光熱費の節約効果で元が取れる場合もあります。 このように、家の断熱性と気密性を上げることは、快適で健康的な暮らしを送る上で欠かせない要素です。リフォームを検討する際には、ぜひ断熱と気密の向上も考えてみてください。

関連記事:屋根断熱で快適な住まいを実現!工法別のメリットやデメリット、補助金について解説します

項目効果対策
断熱性外の冷気を遮断、家の暖気を逃がさない冬は暖かく、夏は涼しい光熱費の節約壁、天井、床に断熱材を入れる予算や家の構造に合わせた断熱材選び
気密性すきま風を防ぐ温度変化を抑制し、ヒートショック対策ほこり、花粉の侵入を防ぎ、アレルギー対策光熱費の節約窓やドアのゴムパッキン交換壁や床の隙間を埋める

小さな工夫の積み重ね

ヒートショックは、日々の暮らしの中で少し意識するだけでもリスクを大幅に減らすことができます。リフォームによって浴室暖房機を設置したり、断熱性を高めることはもちろん有効な手段ですが、それ以外にもできることはたくさんあります。

例えば、入浴前には脱衣所と浴室を暖めておくことが大切です。暖房器具を使用したり、シャワーでお湯を撒いて浴室全体を温めることで外気温との差を少なくしましょう。

また、熱いお湯に長時間浸かることは避け、ぬるめのお湯に短時間で済ませるように心がけましょう。熱いお湯は身体に負担をかけ、血圧の急激な変動を招きやすいため注意が必要です。入浴後は、水分補給も忘れずに行いましょう。入浴によって身体から水分が失われて血液が濃くなりやすいため、意識的に水分を摂ることで血圧の変動を抑制し、ヒートショックのリスクを軽減できます。

さらに、室温をこまめに確認し、急激な温度変化が起こらないようにすることも大切です。特に高齢者がいる家庭では、家族全員でヒートショックの危険性を認識し、予防策を共有することが重要です。例えば、脱衣所に時計や温度計を設置して入浴時間や室温を管理したり、家族同士で入浴時の見守り体制を整えるなどの工夫も効果的です。小さな心がけを継続することで、大きな安心に繋がります。日々の暮らしの中でこれらの工夫を少しずつ実践し、安全で健康な冬を過ごしましょう。

対策詳細
浴室暖房機の設置リフォームによって設置し、浴室を暖める。
断熱性の向上リフォームによって浴室の断熱性を高める。
入浴前の準備脱衣所と浴室を暖房器具やシャワーで温める。
入浴方法熱いお湯に長時間浸かることを避け、ぬるめのお湯に短時間にする。
水分補給入浴後、水分を補給して血液の濃縮を防ぐ。
室温管理室温をこまめに確認し、急激な温度変化を防ぐ。
家族での共有高齢者がいる家庭では、家族全員でヒートショックの危険性を認識し、予防策を共有する。
入浴時間の管理脱衣所に時計を設置し、入浴時間を管理する。
室温の管理脱衣所に温度計を設置し、室温を管理する。
見守り体制家族同士で入浴時の見守り体制を整える。

まとめ

命の危険をはらむヒートショックを防ぐためには、家全体の温度差を小さくすることが重要です。浴室や脱衣所への暖房設備の設置、断熱サッシへの交換、家全体の断熱・気密性能の向上など、さまざまな対策が可能です。また、入浴前の暖房や適温での入浴など、日々の小さな工夫も大切です。

初期費用は必要ですが、光熱費の節約効果や、何より家族の健康と安全を守ることができます。快適で安心な住まいづくりのため、できることから始めてみましょう。

関連記事:断熱サッシで省エネリフォームを実現して、快適な住まいへ!

この記事の監修者

sugiyama

杉山幸治(株式会社SOWAKA)

一級建築施工管理技士

1977年生まれの瀬戸市育ち。建築工学科を卒業後ゼネコンに入社し、ビルやマンション建築の現場監督からはじまり、気付けば業歴27年。
20代はコンクリートと鉄骨に情熱を注ぎながら資格試験の勉強に没頭し、30代はコンクリートの社寺建築と木造での増築という難易度の高い現場などを経験しているうちに、どんな構造でもディレクションができるようになりました。中古住宅のリノベーションを軸に理想の住まいづくりをする会社の責任者として活動しています。

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