50代からはリノベ適齢期。ライフステージに合わせたリノベーションのポイント
執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)
執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

50代を迎えると、子供が巣立ったり、親の介護がひと段落したりと、ライフステージが大きく変化します。
このタイミングで、「これからの、夫婦二人の暮らしを見直したい」「好きなものを大切にして、ゆったりとした暮らしにしたい」という前向きな気持ちで住まいの全面改装やリノベーションを実現される方が増えてきています。
この記事では、そんな50代からのリノベで抑えておきたいポイントについて詳しくご紹介していきます。
- 1. 50代からのリノベ、きっかけは?
- 2. 50代からのリノベの特徴は?
- 2.1. 1. 長期的視点でのプランニングが必要になります
- 2.1.1. 長期的視点で検討したい事の一例
- 2.2. 2. 自分たちらしさを追求する方が多いです
- 2.2.1. 自分たちらしさを盛り込んだプランニングの例
- 2.2.2. 趣味のお部屋を設置されたリノベーションの事例
- 2.3. 3. 家事負担をどれだけ軽減できるかを重視する方も多いです
- 2.3.1. 家事負担を減らすための間取りや設備の一例
- 2.3.2. 関連記事のご紹介
- 2.4. 4. 資産価値を考慮した投資的判断という視点を持つ方もいます
- 2.4.1. 資産価値を高めるための設備投資の一例
- 2.4.2. 関連記事のご紹介
- 2.5. 5. 柔軟性のある間取りで将来に備える方もいます
- 2.5.1. 柔軟性を備えた間取りの一例
- 2.6. 6. 健康と快適性を重視される方もいます
- 2.6.1. 健康面や安全面を考慮した設備の一例
- 2.6.2. 関連記事のご紹介
- 3. ギャラリー
- 4. おすすめの書籍
50代からのリノベ、きっかけは?
最近、「50代はリノベのはじめ時!」と言うようなフレーズを目にする機会が増えたように感じています。
確かに50代はライフスタイルに様々な変化があり、暮らし方ややり残したことの実現などと向き合う作業のひとつとして、「居心地の良い住まいを手に入れたい」と考える年齢なのかも知れません。
50代でリノベーションを考え始めるきっかけとしては、次のようなことが考えられます。
50代からのリノベーションのきっかけは?
- 子育てが一段落して部屋が余ったので、間取りを変えたい
- 親の介護をきっかけに同居することになったので、バリアフリーにしたい
- 実家を相続したので、好みの間取りやインテリアに変えたい
- 趣味を充実させたいので、空間を創り変えたい
- 定年後、自分らしい住環境に変えたい
- ペットにもっとよい環境をつくってあげたい
- 住宅の老朽化が目立ち始めたので、思い切って全面改装したい
- 水まわりや家事動線の使い勝手が悪いので、間取りや動線を見直したい
- 一軒家を手放して、コンパクトな中古マンションを買って自分たち好みにリノベーションしたい
「家族構成の変化に伴う間取りの見直し」や、「実家を相続したので、全面改装したい」といったご要望は、実際に当社でもお聞かせいただく事が多いです。
また、50代になると「気力や体力が必要な事は、元気なうちにやっておきたい!」とか「将来、子供に迷惑を掛けないために、今から準備を進めたい」といった声を聞く事も少なくありません。
50代以上の方となると、すでに建物を所有していらっしゃる方が多いという事もあり、【リノベーション】【全面リフォーム】と言ったご要望が多いというのも特徴的だと言えるでしょう。
50代からのリノベの特徴は?
人生の新たなステージを迎える50代。子育ても一段落し、自分たちの時間を大切にしたい時期です。
長年の夢だった趣味空間の実現や、家事負担を軽減する工夫、20年先を見据えた間取りの設計や設備の導入など、これからの人生をより豊かに彩るための住まいづくりが始まります。
そんな50代ならではのリノベーションの特徴をご紹介します。
1. 長期的視点でのプランニングが必要になります

50代以上の方のリノベーションでは、「今の暮らしを快適にする事」と、「10年、20年先の暮らしを快適にする事」のふたつの視点を持つことが特徴として挙げられます。
例えば、家事を楽にするような動線を取り入れる事や、掃除などのメンテナンスを簡単にするような設備の導入などが考えられます。
また、少し先の将来を見据えて、バリアフリー化や扉のサイズなど長期的な視点を持ったプランニングについても検討したいテーマとして挙げられます。
長期的視点で検討したい事の一例
- バリアフリー化への配慮:段差の解消、手すりの設置場所を考慮した壁の補強、車椅子でも移動しやすい廊下幅の確保など
- メンテナンス性の重視:将来的な修繕やメンテナンスのしやすさを考慮した素材選び
- 省エネ性能の強化:光熱費負担を軽減するための断熱性能の向上、高効率設備の導入
2. 自分たちらしさを追求する方が多いです

子育て中心の生活がひと段落すると、住まいに求めるものが、『夫婦ふたりの時間や趣味を楽しめる空間』へと変化してきます。
日差しがたっぷりと差し込む明るくて開放的なリビングルームにお客様を招いてお喋りを楽しめる住まいにしたいとか、暗くて寒いキッチンを、夫婦二人でお料理を楽しめる空間にしたい、というようなポジティブな変化を求めてリノベーションをされる方が多いように感じます。
自分たちらしさを盛り込んだプランニングの例
- おもてなしの空間:リビングを広くしつつ、窓を大きく取り、明るくて開放的なおもてなし空間にする
- 趣味部屋の確保:読書空間、音楽室、アトリエなど、長年温めてきた趣味のための専用スペースを設ける
- 大人のくつろぎ空間:本格的なキッチン、ワインセラー、映画鑑賞用シアタールームなど夫婦での時間を快適に過ごせる設備を取り入れる
- コレクションの展示場所:長年集めてきた品々を飾るための工夫された収納や展示スペースの確保など
趣味のお部屋を設置されたリノベーションの事例
事例紹介|名古屋市熱田区の重量鉄骨造リノベーション《夫婦でゆっくり暮らす》
3. 家事負担をどれだけ軽減できるかを重視する方も多いです

年齢を重ねるにつれて負担に感じられる家事を、少しでも楽にするための工夫を取り入れるのも50代からのリノベではよくあります。
例えば、あえてキッチンをコンパクトにする事で所有物が増えないようにするという発想もあります。その分、広いリビングを確保してロボット掃除機で簡単に掃除ができるシンプルな間取りに作り変えるという発想もあります。
また、独立したランドリールームを設ける事で、重たい洗濯物を持って家の中を移動する負担をなくしたり、玄関に隣接したパントリーを設ける事で重たい水などを運ぶ負担を回避したりすることもできます。
「家事負担の軽減」をメインにして、間取り全体を最適化する事ができるのは、リノベーションならではかもしれませんね。
家事負担を減らすための間取りや設備の一例
- 動線の最適化:無駄な移動を減らすキッチンレイアウト、洗濯物の動線短縮、重い荷物の運搬距離の短縮
- 掃除のしやすさ:掃除機をかけやすい間取り、埃がたまりにくい素材選び、荷物が増えない工夫
- 収納の見直し:使用頻度に合わせた収納計画、手の届きやすい高さへの調整、玄関周辺のスペースの活用
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4. 資産価値を考慮した投資的判断という視点を持つ方もいます

自分たちが住み終えた後に、子供たちに家を相続する事を踏まえて、できるだけ資産価値を高めるような「投資的判断」で資材や設備を決めて行く、というような視点も50代以上のリノベーションならではだと言えるでしょう。
キッチンやバスルームのランクを上げると言った設備面だけでなく、流行に左右されない、普遍的な美しさを追求したジャパンディスタイルを取り入れたり、断熱や耐震など住まいの性能を全体的に高めるというような視点でリノベーションをされる方が多いのも、50代以上のリノベの特徴のひとつとして挙げられます。
資産価値を高めるための設備投資の一例
- 質の高い素材へのこだわり:長く使えるキッチン設備や建材への投資
- 普遍的なデザイン選択:流行に左右されない、長く愛せるデザイン
- エネルギー効率の高い設備投資:ランニングコストを抑える設備への投資
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5. 柔軟性のある間取りで将来に備える方もいます

現在を快適に過ごすための間取りと、20年・30年先の暮らしを快適にするための間取りの両方を想定して、家族構成や生活スタイルの変化に対応できる住まいづくりを意識することも考えられます。
玄関からリビングに繋がる扉は間口の広いものを採用して、車いすでも出入りしやすい状態にできるようにしておく事や、可動式の扉を設置しておいて、広いリビングを2部屋に仕切る事ができるような工夫など、将来の介護生活を見据えてあらかじめ設備を整えておくのも重要なポイントとして挙げられます。
柔軟性を備えた間取りの一例
- 将来の同居可能性への対応:親との同居や子どもの一時的な帰省に対応できる間取り
- 来客対応の工夫:介護が必要となった時に備えて、スタッフが出入りしやすく、作業しやすい間取り
6. 健康と快適性を重視される方もいます

リノベに着手しはじめる50代ではまだ実感がないかも知れませんが、年齢を重ねるにつれて健康維持と安全性への配慮が高まります。
例えばヒートショックを回避できるようなバスルームや、火を使わずに済むオール電化、石油ファンヒーターの代わりに床暖房など、暮らしの安全性や健康維持のための配慮が必要になります。
健康面や安全面を考慮した設備の一例
- 室内環境の質向上:換気システムの強化、自然光の取り入れ方の工夫
- 温熱環境の改善:床暖房や断熱性能の向上による冬場のヒートショック対策
- 防音対策:良質な睡眠のための寝室の防音性能向上
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ギャラリー
50代からのリノベの特徴を盛り込んだ事例写真をまとめてご紹介します。アイデアの参考にしてみてください!
おすすめの書籍

50代からのリノベ (relife特別編集)
出版社 | 扶桑社 |
---|---|
判型 | B5判 |
定価 | 1980円(本体1800円+税) |
発売日 | 2024/12/25 |
50代からのリノベーションは、単なる住宅の改修ではなく、これからの人生をより豊かに過ごすための投資と言えるでしょう。
何を優先したいのか?一番大切にしたい事は何なのか?をしっかり決めて、50代からの新しい生活を満足させる住まいづくりを是非楽しんでみて下さい。
この記事の監修者

杉山幸治(株式会社SOWAKA)
1977年生まれの瀬戸市育ち。建築工学科を卒業後ゼネコンに入社し、ビルやマンション建築の現場監督からはじまり、気付けば業歴27年。
20代はコンクリートと鉄骨に情熱を注ぎながら資格試験の勉強に没頭し、30代はコンクリートの社寺建築と木造での増築という難易度の高い現場などを経験しているうちに、どんな構造でもディレクションができるようになりました。中古住宅のリノベーションを軸に理想の住まいづくりをする会社の責任者として活動しています。