お風呂リフォームで、安全で安心なバリアフリーのお風呂場にしませんか?

執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

転倒やヒートショックといったお風呂で起こりがちな事故をできるだけ防いで、小さなお子さんから高齢者まで家族みんなが安心して使いやすいように設計された浴室を『バリアフリーのおふろ場』と呼びます。

たとえば、浴室の入り口に段差がないフラットな設計、滑りにくい床材、つかまりやすい手すりの設置、またぎやすい浴槽など、ちょっとした工夫でお風呂の安全性はぐんとアップします。

さらに、急な温度変化で体に負担がかかる「ヒートショック」を防ぐために、浴室や脱衣所に暖房を設置するご家庭も増えています。いざという時に備えて引き戸や呼び出しボタンを取り入れるケースも増えてきました。

この記事では、そんな『バリアフリーのおふろ場』について詳しくご紹介します。

浴室におけるリスクについて

浴室内では、以下のようなリスクが想定されます。

  • 洗い場での転倒
  • 浴槽に出入りする際の転倒
  • 気温差によるヒートショック

主には、「転倒リスク」と「ヒートショック」が、お風呂場内で発生する事故の原因となります。それぞれの原因と回避策について詳しくご紹介します。

転倒リスクについて

洗い場での転倒

お風呂場での事故の中でも特に多いのが、濡れた床で足を滑らせてしまう「転倒」です。転倒で腰などを強打すると、長期間の治療を要するような大けがに繋がりかねません。また、打ちどころが悪ければ命に関わる重大な事故につながってしまうので注意が必要です。

浴槽に出入りする際の転倒

浴槽に出入りする際の転倒も非常に危険です。特に20年以上前に設置された浴槽は深さがあったり、浴槽のふちが高かったりするものが多く、足を引っ掛けてしまう原因になりがちです。

このような浴槽で足を踏み外して転倒したり、浴槽の出入りで体勢を崩して転んでしまうことがありますが、こちらも打ちどころが悪ければ生命に関わる重大な事故につながってしまいます。また、高齢になるとそもそも浴槽内への出入り自体が難しくなる場合もあります。

転倒事故の防止対策

上記のようなリスクを回避するための防止対策には、どのようなものがあるのでしょうか?

まず、浴室の入り口にある段差は、つまずきの原因となるため、解消することが重要です。段差をなくしてフラットにすることで安全に出入りできるようになります。どうしても段差をなくせない場合はスロープを設置するなどして、段差を緩やかにする工夫をしましょう。また、浴室の床全体をフラットにすることで水たまりができにくくなり、滑りにくさも向上します。

次に、浴槽への出入りを補助するために手すりの設置は欠かせません。浴槽の縁や壁にしっかりとした手すりを設置することで、身体を支えながら安全に出入りすることができます。手すりは、握りやすく、身体に負担がかからない高さに設置することが大切です。使用する方の身長や身体状況に合わせて、適切な位置を選びましょう。

浴槽そのものにも、ちょっとした工夫をすることで、ぐっと使いやすくなります。浴槽の底を浅くしたり、またぎやすい高さの浴槽を選ぶことで出入りが楽になります。また、浴槽内に座るための椅子を設置することも効果的です。椅子があれば立ち上がる際の負担を軽減でき、転倒の危険性を抑えられます。高齢者だけでなく、身体の不自由な方にもおすすめです。

床材を見直すことも、お風呂の安全性を高めるうえでとても大切なポイントです。滑りにくい素材の床材を選ぶことで、濡れた状態でも転倒のリスクをぐっと減らすことができます。最近では、表面に凹凸のある床材や、滑り止め加工が施された床材など、様々な種類の床材が販売されています。また、水はけのよい床材を選ぶことで、浴室の床を常に乾いた状態に保ち、安全性をさらに高めることができます。これらの対策を施すことで、浴室での転倒事故を未然に防ぎ、安心して入浴を楽しめる環境を作ることができるのです。

転倒事故の防止策まとめ

対 策詳 細
段差解消・浴室入り口の段差をなくし、フラットにする。
・段差をなくせない場合は、スロープを設置する 浴室床全体をフラットにして水たまりを防ぎ、滑りにくくする。
手すり設置・浴槽の縁や壁にしっかりとした手すりを設置する。
・握りやすく、身体に負担がかからない高さに設置する 使用する方の身長や身体状況に合わせて適切な位置を選ぶ。
浴槽の工夫・浴槽の底を浅くする、またはまたぎやすい高さの浴槽を選ぶ。
・浴槽内に座るための椅子を設置する。
床材の変更・滑りにくい素材の床材を選ぶ 表面に凹凸のある床材や滑り止め加工が施された床材を選ぶ。
・水はけのよい床材を選ぶ。

気温差によるヒートショック

急激な温度変化によるヒートショックも、お風呂場で起こりやすい危険な現象です。寒い脱衣所から温かいお風呂場へ移動する時、あるいはその逆の場合体に大きな負担がかかります。急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や脳に深刻な影響を与えることがあります。最悪の場合、意識を失ったり、命に関わる事態に発展することもあるので、冬場は特に注意が必要です。

ヒートショックの防止対策

ヒートショックは冬の入浴時に発生する温度変化による危険な現象で、失神や心筋梗塞、脳卒中などを引き起こす可能性があり、特に高齢者にとって命に関わる重大な問題です。

予防対策としては、脱衣所やお風呂場に暖房設備や浴室乾燥機を設置して居間との極端な温度差を減らすことが重要です。入浴前には浴室や脱衣所を温めておき、お湯の温度はぬるめ(41度以下)に設定し、入浴時間を短くすることも効果的です。

住宅の断熱性能を高めるために、壁や天井への断熱材の施工や二重窓の設置も有効な対策となります。

また、熱いシャワーで浴室を暖めたり、家族と一緒に入浴したり、気分が悪くなったらすぐに助けを求めるなどの心がけも大切です。これらの対策で安全で快適な入浴環境を整えることは、健康で豊かな生活を送る上で非常に重要です。

ヒートショックの防止策まとめ

対 策詳 細
浴室の暖房入浴前に浴室暖房で浴室内を暖めておく。天井埋め込み型や壁掛け型など様々な種類がある。
脱衣所の暖房脱衣所に小型の暖房器具を設置する、床暖房を導入する。
住宅の断熱性能向上壁や天井に断熱材を施工する。窓ガラスを二重窓にする。
入浴時の注意点入浴前に熱いシャワーで浴室を暖める。湯温を41度以下にする。長湯を避ける。家族と一緒に入浴する。入浴中に気分が悪くなったらすぐに助けを求める。

その他の安全のための工夫

転倒リスク及びヒートショックに対する対策以外にも、いくつかの工夫が挙げられます。

樹脂製の引き戸を設置する

お風呂場の扉については、開閉が楽な引き戸にするのがおすすめです。内側に開くタイプの扉の場合、万が一の事故で浴室内で倒れてしまった場合、扉を外から開けられないといった事態が起こる可能性があります。引き戸であれば、そのような心配はありません。

また、扉の材質は軽量タイプの開閉がしやすいものがおすすめです。素材についてもガラス製だと割れる危険性があるため、安全性を重視するのであれば樹脂製を選ぶのが良いでしょう。

呼び出しボタンを設置する

次に、緊急時に助けを呼べる呼び出しボタンの設置も検討しましょう。ボタンは、大きく押しやすいものを選び、床に倒れてしまった場合でも手が届く場所に設置することが大切です。

また、浴室の外だけでなく、他の部屋や玄関など家の中の複数個所に音が聞こえるように設置することで、より迅速な対応が可能になります。

可動式シャワーヘッドを設置する

可動式のシャワーヘッドの採用も、座ったままでも体や頭を洗いやすいという点で安全性や利便性の向上につながります。

また、水流の強さや種類を調整できるものなら、入浴の時間を快適にしてくれるというメリットも得られるでしょう。

照明を改善する

浴室全体の明るさも、快適な入浴環境には欠かせません。照明を明るくすることで足元や段差が見やすくなり、転倒防止につながります。また、浴室全体が明るく開放的になることで、リラックス効果も高まります。

毎日の入浴を安全かつ快適に楽しむために、お風呂のバリアフリー化を検討してみることをお勧めします。年齢を問わず、家族みんなが安心して使えるお風呂場は、暮らしの質を向上させ、笑顔あふれる毎日へと導いてくれるでしょう。

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この記事の監修者

sugiyama

杉山幸治(株式会社SOWAKA)

一級建築施工管理技士

1977年生まれの瀬戸市育ち。建築工学科を卒業後ゼネコンに入社し、ビルやマンション建築の現場監督からはじまり、気付けば業歴27年。
20代はコンクリートと鉄骨に情熱を注ぎながら資格試験の勉強に没頭し、30代はコンクリートの社寺建築と木造での増築という難易度の高い現場などを経験しているうちに、どんな構造でもディレクションができるようになりました。中古住宅のリノベーションを軸に理想の住まいづくりをする会社の責任者として活動しています。