リフォームとリノベーションの違いとは?

執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

リフォームとリノベーションは似ているようですが明確な違いがあります。それぞれの強み・弱みを理解して、ニーズに合った選択をすることが重要です。

この記事では「リフォームとリノベーションって、何が違うの?」という疑問に対して、それぞれの特徴や強み、弱みなどについて詳しく解説します。

リフォームとリノベーションの違い一覧表

リフォームとリノベーションの違いについて、一覧表にまとめました。

それぞれの項目ごとに内容を見ていただき、リフォームかリノベーションのどちらが適しているのかを検討する際の参考にしてください。

リフォームリノベーション
定義老朽化した設備や内装を修繕・交換して、元の状態に戻す住まい全体を現代のライフスタイルに合わせて一新し、住まいの価値を向上させる
目的住宅の限定的な機能を回復し、元の状態に戻すこと住宅全体の機能やデザインを一新し、価値を高める
工事の範囲・規模小規模な改修や部分的な修繕大規模な改修や住宅全体の作り替え
主な施工内容壁紙の張り替え、設備の交換、外壁の塗装など耐震補強、断熱改修、間取り変更、デザインリニューアルなど
工期数日から数週間程度数ヶ月 物件の規模や内容によっては1年以上に及ぶこともある
費用数万円〜数十万円数百万円〜数千万円
ライフスタイルへの影響日常生活に大きな影響はない生活スタイルが大きく変わる可能性がある
強みやメリット・価格を抑えて必要な範囲だけを修繕したり、入れ替えたりできる
・短期間で工事が済むので負担が少ない
・住宅内部全体を設計することができる
・耐震構造や断熱性・気密性の構造など住宅構造の改善ができる
・おしゃれで洗練された住まいへと作り変える事ができる
弱みやデメリット・おしゃれさやデザイン性はあまり期待できない
・間取りの変更や構造の改善などは対応できない
・小規模な工事の場合割高になる可能性がある
・住宅ローンを組んで支払うケースが大半となる
・工事期間が長く、仮住居などの費用がかさむ事がある

工事の目的と範囲

リフォームとリノベーションは、それぞれ工事の目的や工事の範囲が異なります。その具体的な相違点は以下の通りです。

リフォームの目的と範囲とは

台所リフォーム
  • 工事の目的:リフォームの主な目的は、古くなったり故障したりした住宅内の設備や内装を修繕・交換し、きれいな状態に状態に整える(あるべき状態に戻す)ことです。例えば、壁紙の張り替え、キッチンやトイレなど水回りの設備の交換、外壁の塗り替えなどが典型的なリフォームの例です。
  • 工事の範囲:リフォーム工事の範囲としては、小規模な修繕やメンテナンスが中心です。部分的な改修や修理が多く、建物の構造や大規模なレイアウト変更は行わないことが一般的です。

環境省が主導する【先進的窓リノベ】では、断熱対策を主な目的とした【開口部(窓)の断熱改修(リフォーム)】に補助金が支給される事もあり、工事の範囲を窓に絞って窓断熱リフォームをするというケースも良くあります。

参考:先進的窓リノベ2024事業の「事業概要」公式サイト

リノベーションの目的と範囲とは

リノベーション
  • 工事の目的:リノベーション工事は、建物の価値を高めるとともに、現代のライフスタイルに合わせて間取りを含む住宅の機能やデザインを一新することを目的とします。また、暮らしやすさを実現したり、自分らしい住まいを得るために徹底的にこだわって住宅内部を作り込む事例も少なくありません。新築と同様の状態まで改善するケースも多いです。
  • 工事の範囲:リノベーションで改修する範囲は住宅全体に及ぶことが多く、断熱や耐震など建物の構造部分の変更や、間取りの変更、内装全体のデザイン変更などが含まれる大規模な工事となります。

写真は、鉄骨造戸建ての実家を間取りも含めて丸ごとリノベーションした事例です。1階部分は親世帯・2階部分は子世帯が快適に暮らせるように、というご要望を受けて完全二世帯住宅として大規模な工事を行いました。

大幅な間取りの変更に加えて、断熱リノベーションも実施したことで、目的に応じた住宅の作り変えと価値向上の両方を叶える事ができました。より詳しい情報は、以下のリンクよりご覧ください。

施工内容の違い

リフォームとリノベーションは、施工内容や工事金額も大きく異なります。

リフォームの施工内容とは

壁紙張り替え

リフォーム工事の主な施工内容としては、既存の設備を取り外して新しいものに修理したり、貼り替え、交換するなどの小規模な改修となります。

費用的には数万円~数十万円程度のものが大半で、メンテナンスや設備の交換がメインの作業となります。

写真は壁紙を貼り替えているリフォーム工事の事例です。

リノベーションの施工内容とは

リノベーションの施工内容は、耐震性の向上や、断熱性・気密性の向上など建物の構造に関わる部分の改修など高度な建築技術を要する工事をはじめ、間取りの変更や水回りの位置の変更など多岐にわたりますが、基本的には住宅全体に対する大規模な改修を行います。

費用的には数百万円~数千万円となり、住宅購入費用を含めてローンを組むケースが大半です。

写真は建物内部を全て取り払いスケルトンの状態になったものです。この状態から、内部設備の設置を進めて行きます。

対象とする建物の違い

工事対象となる建物の種類にも違いがあります。

リフォーム

リフォームは主に戸建て住宅やマンションの一部屋など、部分的な改修が必要な住宅を対象として工事を請け負い、日常の生活における不便を解消するための改修が中心です。

リノベーション

リノベーションは戸建てやマンション室内の大規模な改修を手掛ける事が大半です。

個人の住宅に限らず、古いオフィスビルを住居に改修したり、倉庫を商業施設に改修するような用途変更を伴うケースもあります。

デザインや費用の違い

リフォームの場合

洗面台リフォーム

リフォームでは主に既存のスタイルや機能を維持しつつ、修繕・改善することが目的のため、デザイン性よりもコストを抑えた施工が好まれる傾向があります。

上記の写真は、費用面を重視し、コンパクトな洗面台を設置した洗面所リフォームの事例写真です。

洗面台メーカーの大手TOTOの調査では、洗面所リフォーム実例の費用相場は30~59万円ばボリュームゾーンとなっています。

引用元:TOTO公式サイト

リノベーションの場合

リノベーションは単に住宅を造り変えるだけでなく、空間の再設計やデザイン性に対するニーズを満たすという側面もあります。

家全体を作り変える場合、「全体をナチュラルなテイストで統一する」とか「ホテルライクで生活感のないインテリアにしたい」と言うような希望を叶える事ができるのはリノベーションの魅力のひとつと言えます。

そういった事もあり、費用面では1000万円~数千万円に及ぶケースが大半となります。

写真はホテルライクな洗面台を取り入れたケースです。収落ち着いたダークブラウンでの台はミラーのフレームと同じダークブラウンの木材を使用し高級感がある仕上がりになっています。壁面のタイルもデザイン性を感じさせるおしゃれな洗面スペースです。

強みと弱み

ここまで、リフォームとリノベーションの違いについて詳しく解説しましたが、それぞれの強みと弱みをまとめました。

リフォーム工事の強みと弱み

  • 強み:
    ・価格を抑えて必要な範囲だけを修繕したり、入れ替えたりできる
    ・短期間で工事が済むので負担が少ない
  • 弱み:
    ・おしゃれさやデザイン性はあまり期待できない
    ・間取りの変更や構造の改善などは対応できない

リノベーション工事の強みと弱み

強み:
・「暮らしの改善」という視点で住宅内部全体を設計することができる
・耐震構造や断熱性・気密性の構造など住宅構造を高め、建物の寿命を延ばす工事も可能
・おしゃれで洗練された住まいへと作り変える事ができる
・インテリアコーディネイトまでトータルに依頼できる業者もある

弱み:
・リノベーションでは部分的な工事は基本的に請け負わない場合が多く、小規模な工事の場合割高になる可能性がある
・費用面では1,000万円以上となる場合が多く、住宅ローンを組んで支払うケースが大半となる
・工事期間が数か月に及ぶうえ、工事中は仮住まいが必要になる場合もあり費用がかさむ事がある

必要な資格と許可の違い

リフォームとリノベーションは、工事にあたり必要となる資格や工事許可などの内容も異なります。

リフォーム、リノベーションを問わず様々な業態があるので一概には言えませんが、最大の相違点としては、リノベーション業者は大規模工事を行うため、建設業法に基づく「建設業許可」が必要である、という点です。以下に詳しくご説明します。

リフォーム業者

カーテンレール設置工事

小規模な工事の請負に特化したリフォーム業者の場合は、特別な許可がなくても営業が可能です。

ただし、規模や内容によっては建設業許可が必要になる場合もあります。

また、工事の内容に応じて作業を担当するスタッフ個人が、電気工事士や給水装置工事主任技術者などの資格を保有している必要がある場合もあります。

リノベーション業者

図面

リノベーション業者は大規模工事を行うため、建設業法に基づく「建設業許可」が必要です。

また、建物の設計・監理を行うための国家資格である建築士や、建設工事の計画、施工、管理に関する知識を持つことを証明する国家資格である施工管理技士などの資格保持者が在籍している場合が大半です。

参考:建築・電気工事施工管理技術検定 | 一般財団法人建設業振興基金

まとめ

リフォームとリノベーションの違いは、目的、範囲、施工内容、必要な許可、対象建物、デザイン、価格など広範囲に及びます。

リフォームは主に小規模な修繕や設備の交換を短期間で行い、劣化した部分だけを新しいものと交換することが主な工事の目的です。工事費用は数万円から数十万円が大半となり、業者を選ぶポイントとして「価格」が重視される傾向があります。

一方、リノベーションは建物全体の価値を向上させるために大規模な改修を行います。工事には、間取り変更やデザインの刷新を含むため、費用が高額になり住宅ローンを組む必要が生じるケースが大半となります。業者選びのポイントとして、建設業法に基づく「建設業許可」を保有している事は大前提で、それに加えて「技術力」や「デザイン性」などが重視される場合もあります。

リフォームとリノベーションの違いや、強み・弱みを理解することで、希望に応じて適切な業者を選び、理想的な住まいづくりを実現することが可能です。

ちなみに、この記事を書いている株式会社SOWAKAは名古屋を中心にリノベーションを手掛ける会社です。

愛知県内で大規模な住宅の改修をご検討の際には、是非お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

sugiyama

杉山幸治(株式会社SOWAKA)

一級建築施工管理技士

1977年生まれの瀬戸市育ち。建築工学科を卒業後ゼネコンに入社し、ビルやマンション建築の現場監督からはじまり、気付けば業歴27年。
20代はコンクリートと鉄骨に情熱を注ぎながら資格試験の勉強に没頭し、30代はコンクリートの社寺建築と木造での増築という難易度の高い現場などを経験しているうちに、どんな構造でもディレクションができるようになりました。中古住宅のリノベーションを軸に理想の住まいづくりをする会社の責任者として活動しています。

リノベーション事例

名古屋市内を中心に、愛知県全域で多数のリノベーションの事例があります。
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