リノベーションで後悔しないために。ホームインスペクターの選び方や費用をご紹介
執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)
執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)
リフォームやリノベーションについて雑誌やウェブで情報収集していて、『ホームインスペクター』という単語を目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ホームインスペクターは、簡単に言うと、家の状態を詳しく調べてくれる専門家のこと。
リフォームやリノベーションに着手する前に、家の傷み具合や必要な修繕箇所を見つけてくれる、家づくりの心強い味方です。
この記事では、実際に診断を行う専門家である『ホームインスペクター』の役割や選び方、費用などについて詳しくご紹介します。快適な住まいのリノベーションを実現する際の参考にしてください。
- 1. ホームインスペクターとは?
- 2. ホームインスペクターの役割とは?
- 2.1. どんなことに役立つ?
- 2.2. インスペクションでも発見できない瑕疵もあることに注意
- 3. ホームインスペクターの資格とは?
- 4. ホームインスペクターの選び方
- 4.1. 家の診断を受けるメリット
- 5. 家の診断の流れ
- 5.1.1. ① ホームインスペクターを選定し、診断日時を決める
- 5.1.2. ② ホームインスペクターが訪問し、建物内外を調査
- 5.1.3. ③ 屋根劣化、外壁ひび割れ、基礎沈下などの調査結果を写真や図面で記録
- 5.1.4. ④ 診断結果を報告書にまとめて、依頼者に報告書提出
- 5.1.5. ⑤ 修繕必要箇所、費用、メンテナンス方法などについて報告書内容に基づき修繕判断
- 5.1.6. ⑥ 必要に応じて、修繕業者を紹介
- 6. 家の診断にかかる費用
- 7. まとめ
ホームインスペクターとは?

中古住宅の大規模リフォームやリノベーション工事を行う際、事前に建物調査(ホームインスペクション)を行う調査員のことをホームインスペクターと呼びます。
ホームインスペクターは、住宅の現在のリアルな価値を判断するための建物検査を行う専門家のこと。特別な資格はありませんが、主に建築現場や設備に詳しい人、建築士や不動産相談員などの専門家が携わっています。
また、既存住宅状況調査技術者や、JSHI公認ホームインスペクターなど、建物インスペクションに特化した民間の資格もあります。
大切な住まいに関わる検査ですので、きちんとした資格や知識がある専門家に依頼することをお勧めします。
ホームインスペクターの役割とは?

住まいの診断士ともいえるホームインスペクターは、住宅の健康状態をくまなく調べる専門家です。まるで、人間のかかりつけのお医者さんのように、家の隅々まで丁寧に調べ、隠れた不具合を見つけ出します。家の診断士は単なる住宅の検査員とは違い、豊富な知識と経験を持ち、建物の構造や設備に関する深い理解に基づいて客観的な評価を行います。
診断の対象となるのは、家のあらゆる部分です。屋根や外壁といった家の外側だけでなく、基礎や床下といった普段は見えない部分も細かくチェックします。また、配管や電気系統、換気システムといった設備についても、安全性や機能性を綿密に確認します。家の診断士は、これらの項目を一つ一つ丁寧に調べ、写真や図面などを用いて分かりやすい報告書を作成します。
どんなことに役立つ?

ホームインスペクターが作成した報告書は、住宅に関する重要な判断材料となります。
例えば、家を購入しようとする人にとっては、購入の可否を判断する上で貴重な情報源となります。また、家を売却しようとする人にとっては、適正な価格設定の根拠となります。さらに、既に家に住んでいる人にとっては、今後の修繕や改修計画を立てる上で役立ちます。
ホームインスペクターによる診断は、建物の劣化や欠陥の早期発見につながり、大きな修繕費用を未然に防ぐことにも役立ちます。小さなひび割れや水漏れなど、一見すると些細な問題でも、放置しておくと大きな損害に発展することがあります。
家の診断士はこれらの問題を早期に見つけ出し、適切な対処法を提案することで、建物の寿命を延ばし快適な住まい環境を維持する手助けをします。家の診断士は、住宅に関する公正な第三者機関として、安心して住宅の取引や維持管理ができるようにサポートする大切な役割を担っています。
項目 | 内容 |
---|---|
家の診断士の役割 | 住宅の健康状態をくまなく調べる専門家。家の隅々まで丁寧に調べ、隠れた不具合を見つけ出す。豊富な知識と経験を持ち、建物の構造や設備に関する深い理解に基づいて、客観的な評価を行う。 |
診断対象 | 屋根、外壁、基礎、床下、配管、電気系統、換気システムなど、家のあらゆる部分。 |
診断方法 | 各項目を丁寧に調べ、写真や図面などを用いて分かりやすい報告書を作成。 |
報告書の利用目的 | 購入希望者: 購入の可否判断 売却希望者: 適正価格設定の根拠 居住者: 修繕・改修計画 |
診断のメリット | 劣化や欠陥の早期発見、大きな修繕費用を未然に防ぐ、建物の寿命を延ばす、快適な住まい環境を維持。 |
インスペクションでも発見できない瑕疵もあることに注意

専門家が実施するインスペクションといえども、決して完璧ではありません。
調査員が目視で確認できない建物の内部や長期間にわたる劣化の蓄積を完全に把握することは難しいのです。これは資格を持ったインスペクションの専門家であれ、建築のプロであれ同様で、現場調査時に表面しか確認できないケースが実際には多々あります。
そのため、「インスペクション報告書の内容が良い=完全に安心」と考えるのは危険です。
参考資料:既存住宅状況調査(インスペクション)とは
ホームインスペクターの資格とは?

家の診断は、住宅の劣化状況や不具合箇所を専門家に見てもらう大切な作業です。安心して住み続けるためにも、家の診断を行う専門家、つまり家の診断士の選び方は慎重に行う必要があります。
公的な家の診断士の資格制度は今のところありません。ですが、建築士や不動産鑑定士や住宅検査技師といった、建物の専門知識を持つ資格者が家の診断士として活躍しています。
これらの資格は国家資格であり、一定の知識と技能水準を保証するものです。建築士は建物の設計や工事監理を行う資格で、住宅の構造や建築基準法に深い理解があります。不動産鑑定士は土地や建物の価格を評価する専門家で、住宅の資産価値を判断する際に役立ちます。住宅検査技師は住宅の劣化や欠陥を調査する資格で、建物の不具合を見つける能力に長けています。
また、民間の団体が独自に認定する家の診断士の資格もあります。これらの資格は、公的資格に比べて知名度は低い場合もありますが、専門的な知識や技能を習得している証となります。資格を持つ診断士は、それぞれの専門知識を活かして診断を行いますので、資格の種類にも注目してみましょう。
ホームインスペクターの選び方

資格の有無だけでなく、豊富な経験と実績も診断士を選ぶ上で重要な要素です。多くの住宅診断を行ってきた診断士は、様々な建物の状況や不具合事例に精通しており、的確な判断ができます。実績をホームページや資料などで確認し、信頼できる診断士かどうかを見極めましょう。
さらに、診断結果を分かりやすく説明してくれるか、顧客とのコミュニケーションを丁寧に取れるかといった点も大切です。家の診断は専門用語が多く、一般の人には理解しにくい部分もあります。ですから、診断結果を分かりやすく説明し、質問に丁寧に答えてくれる診断士を選ぶことが重要です。
実際に診断をしてもらう前に、実際に会って話を聞いてみることで自分に合った診断士を見つけることができるでしょう。
家の診断士の選び方 | 詳細 |
---|---|
公的資格 | 建築士:建物の設計や工事監理、住宅の構造や建築基準法に深い理解 不動産鑑定士:土地や建物の価格評価、住宅の資産価値判断 住宅検査技師:住宅の劣化や欠陥調査、建物の不具合発見 |
民間資格 | 民間の団体が独自に認定。公的資格に比べ知名度は低いが、専門知識や技能を習得している。 |
経験と実績 | 多くの住宅診断経験を持つ診断士は、様々な事例に精通し、的確な判断ができる。実績はホームページ等問い合わせて確認するのがおすすめ。 |
診断士選びのポイント | 診断結果を分かりやすく説明し、質問に丁寧に答えてくれる診断士であることが重要。 |
家の診断を受けるメリット

住まいの診断を受けることは、様々な利点があります。人生における大きな出来事である住宅の購入、売却、そして日々の暮らしを守るためにも、専門家による診断は欠かせません。
まず、住宅の購入を考えている方にとって、診断は大きな安心材料となります。購入前に家の状態を詳しく知ることで、欠陥や不具合の有無を確認できます。もし問題が見つかれば、売主との価格交渉に役立てたり、場合によっては購入を見送る判断材料にもなります。高額な買い物を後悔しないためにも、事前の診断は重要です。
次に、住宅の売却を考えている方にとっても、診断は大きなメリットがあります。売却前に家の状態を把握することで適切な価格設定を行い、スムーズな売却活動につなげることができます。修繕が必要な箇所を事前に把握しておけば、売却前に必要な工事を行い、買い手に安心感を与えることができます。また、建物の状態が良いことを証明することで売却価格の向上も期待できます。
さらに、既に住宅を所有している方にも定期的な診断をおすすめします。家は、風雨や気温の変化、そして日々の生活の中で少しずつ劣化していきます。定期的な診断によって建物の劣化や不具合を早期に発見し、必要な補修や修繕を行うことができます。早期発見、早期対応は、大きな修繕費用を防ぎ、建物の寿命を延ばすことに繋がります。また、快適な住環境を維持するためにも定期的な診断は欠かせません。雨漏りやシロアリ被害など、住まいにとって深刻な問題を未然に防ぐことができます。
このように、家の診断は住宅に関する様々なリスクを減らし、資産価値を守るための有効な手段です。人生の様々な場面で大きな役割を果たす家の診断を、ぜひご検討ください。
対象者 | 診断のメリット |
---|---|
住宅購入者 | 欠陥や不具合の有無を確認 売主との価格交渉に役立つ 購入を見送る判断材料になる 高額な買い物を後悔しないための判断材料 |
住宅売却者 | 適切な価格設定を行い、スムーズな売却活動 修繕が必要な箇所を事前に把握 買い手に安心感を与える 売却価格の向上 |
住宅所有者 | 建物の劣化や不具合を早期に発見 大きな修繕費用を防ぎ、建物の寿命を延ばす 快適な住環境を維持 雨漏りやシロアリ被害など深刻な問題を未然に防ぐ |
家の診断の流れ
ホームインスペクションは、住宅の状態を評価し、必要な修繕やメンテナンスを判断するための重要なプロセスです。
実際の診断は、以下に示すような流れで進められます。それぞれのステップについて詳しくご紹介します。
① ホームインスペクターを選定し、診断日時を決める
まず、信頼できるホームインスペクターを選定します。インスペクターの資格や経験を確認し、複数の候補から選ぶことが重要です。その後、インスペクターと連絡を取り、診断日時を決定します。
中古住宅を購入または売却する際に、不動産屋さんが紹介してくれることもありますが、費用に紹介手数料などが上乗せされている場合もあるので、ご自身で見つけるというのもありです。
探し方としては、【ホームインスペクター, 愛知(エリア名)】などで検索して探すのがおすすめです。
また、ChatGPTなどの生成AIに【愛知県でホームインスペクションをしてくれる専門家を教えて。】と聞くと、候補をいくつか教えてくれます。
② ホームインスペクターが訪問し、建物内外を調査
選定したホームインスペクターは、指定された日時に物件所在地を訪問し、建物の内外を詳細に調査します。
この調査では、構造的な問題や安全性に関わる要素がチェックされます。
③ 屋根劣化、外壁ひび割れ、基礎沈下などの調査結果を写真や図面で記録
調査中に発見された問題点(屋根の劣化、外壁のひび割れ、基礎の沈下など)は、写真や図面を用いて詳細に記録されます。これらを活用して、後の報告書作成を進めていきます。
④ 診断結果を報告書にまとめて、依頼者に報告書提出
調査結果は、報告書としてまとめられます。この報告書には、調査した内容や発見された問題点、推奨される修繕方法が含まれます。完成した報告書は依頼者に提出されます。
⑤ 修繕必要箇所、費用、メンテナンス方法などについて報告書内容に基づき修繕判断
報告書をもとに、修繕が必要な箇所やその費用、メンテナンス方法について判断します。依頼者は、報告書の内容を参考にして、どの修繕を優先するかを決定します。
もしリフォームやリノベーションを依頼する業者が決定しているなら、報告書を業者に共有しましょう。報告内容をもとに、より合理的な見積もりを出してもらう事が可能になったり、予算内で優先すべき工事についてのアドバイスがもらえたりするはずです。
⑥ 必要に応じて、修繕業者を紹介
インスペクターは、依頼者の必要に応じて、自身の人脈や過去の経験を基に適切な業者を推薦し、依頼者がスムーズに修繕を進められるようサポートしてくれる場合があります。
気になることがあれば、インスペクターに相談してみると良いでしょう。
以上がホームインスペクションの基本的なプロセスです。この手順を踏むことで、住宅の状態を正確に把握し、適切なメンテナンスを行うことが可能になります。
家の診断にかかる費用

家の診断にかかる費用は、建物の大きさや診断の内容、地域によって差があります。おおよそ数万円から十数万円ほどが一般的です。費用を抑えたい場合は、いくつかの業者に見積もりを出してもらい、それらを比べるのが大切です。
たとえば、延べ床面積が大きい家や、築年数が古い家は、診断に時間がかかるため費用が高くなる傾向があります。また、耐震診断やシロアリ診断など、専門的な診断が必要な場合は、追加費用がかかることもあります。さらに、地域によっては、診断業者の数が少ないため、費用が高くなる場合もあります。
見積もりを依頼する際は、診断の内容や、診断結果の報告書には何が含まれているのか、追加料金が発生するのかなどを確認しましょう。よくわからない点は、担当者にきちんと質問することが大切です。
安いからという理由だけで業者を決めるのは避けましょう。これまでの実績や信頼性も考えて、総合的に判断することが大切です。家の診断は、住宅に関する大きな決断を支えるための大切なものです。そのため、費用に見合うだけの価値があるのかをしっかりと考え、信頼できる診断士を選びましょう。
家の診断は、建物の状態を正確に把握し、適切な修繕計画を立てるために必要なものです。安心して長く住むためにも、家の診断を検討してみましょう。建物の劣化状況を早期に発見することで、大きな修繕費用がかかる前に対策を立てることができます。また、家の診断を受けることで、売却時の価格交渉もスムーズに進めることができます。
項目 | 内容 |
---|---|
費用のめやす | 数万円~十数万円 延べ床面積が大きい、築年数が古い家は高くなる傾向 専門的な診断(耐震、シロアリなど)は追加費用あり 地域によっては業者数が少なく高額になる場合も |
見積もり | 複数業者から取得し比較 診断内容、報告書の内容、追加料金の有無を確認 不明点は質問 |
業者選定 | 価格だけで判断しない 実績、信頼性も考慮 |
診断のメリット | 適切な修繕計画 住宅に関する大きな決断を支える 劣化状況の早期発見 売却時の価格交渉をスムーズに |
まとめ
中古住宅を大規模リフォーム、リノベーションする際に、是非行ってほしい『ホームインスペクション』についてのご紹介と、実際に診断を行う専門家である『ホームインスペクター』の役割や選び方、費用などについて詳しくご紹介しました。
快適な暮らしをかなえるリノベーションの第一歩として、住まいの健康診断とも言えるインスペクションを受けて、安心して暮らせる家づくりを実現してください。
名古屋でリノベーションを手掛ける株式会社SOWAKAでは、ホームインスペクションのご相談も受け付けています。検査を受けてみようかな?という方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

杉山幸治
杉山幸治(株式会社SOWAKA)
一級建築施工管理技士、監理技術者、第二種電気工事士、石綿含有建材調査者、リノベーションコーディネーター
1977年生まれ、瀬戸市育ち。建築工学科を卒業後、ゼネコンに入社。ビルやマンションの現場監督としてキャリアをスタートし、気がつけば業界歴は27年を超えました。
20代はコンクリートと鉄骨に情熱を注ぎ、現場で学びながら知識と技術を深める日々。30代になると、コンクリートによる社寺建築を木造で接合させる増築など難易度の高い現場も経験し、構造の違いを超えて多様な現場をディレクションできる力を培いました。また、重量鉄骨造の建物は断熱性能がとても低いことに着目し、セルロースファイバー材を吹き込むための工法と工程管理を生み出してSOWAKAで標準仕様化として提案をしています。
現在は、中古住宅のリノベーションを軸に、理想の住まいを実現するための提案と施工を担う責任者として活動しています。
趣味はアウトドア、散歩、硬式テニス