購入前に知っておきたい!実例に学ぶ、中古住宅購入時のリスクと対策
執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)
執筆監修:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)
中古住宅の購入には多くのメリットがありますが、その反面、不具合やトラブルのリスクも存在します。特に雨漏りや構造的な劣化は、購入後に後悔を生む大きな要因となるため、事前の注意が必要です。
この記事では、実際の経験を交えながら、中古住宅購入時のリスクや注意点、そしてそれをどのように回避すべきかについて詳しく解説していきます。
中古住宅購入後のトラブル事例:雨漏り

昨年秋、私たちがサポートしたお客様が購入された築30年ほどの鉄筋コンクリート造の住宅で、残念ながら雨漏りが発生してしまいました。事前に建物調査(インスペクション)を行い、防水工事を実施して物件を引き渡したにもかかわらず、1か月後にトラブルが発覚。具体的な状況を以下にご紹介します。
事例の詳細
- 物件の概要:
築30年ほどの2階建て鉄筋コンクリート造の住宅。不動産会社が防水工事を行った後、所有権が移転され、工事を開始。 - 雨漏りの発覚:
工事開始後2週間、大雨が降った際には室内への漏水は見られなかったものの、天井が湿っていることを確認。外壁塗装やシーリングの打ち直しは当社が担当しましたが、防水工事には手を加えていなかったため、問題が再発。 - 対応状況:
お客様やインスペクションを行った調査員、不動産会社と連携し、雨漏り箇所の原因究明と再修繕に取り組むことに。
この事例からわかるように、中古住宅購入時のインスペクションや事前の防水工事が行われていても、すべてのリスクを排除することは難しいのが現実です。
中古住宅の建物調査(インスペクション)とは?

建物調査の目的
建物調査(インスペクション)とは、専門の建物調査員が中古住宅の状態を診断し、不具合や劣化箇所を報告する仕組みです。購入希望者が安心して物件を選べるよう、建物の性能や状態を「見える化」する役割を果たしています。具体的には、以下のような項目がチェックされます。
建物調査の項目
- 天井裏や床下の状態
- 外壁や屋根の劣化状況
- シーリング部分のひび割れ
- 配管や設備の劣化具合
インスペクションの限界
ただし、インスペクションも完璧ではありません。調査員が目視で確認できない箇所や長期間にわたる劣化の蓄積を完全に把握することは難しいのです。私たち建築のプロも同様で、現場調査時に表面しか確認できないケースが多々あります。そのため、「インスペクション報告書の内容が良い=完全に安心」と考えるのは危険です。
参考資料:既存住宅状況調査(インスペクション)とは
中古住宅市場の実情
中古住宅市場に出回る物件の多くは、建物の劣化が進んでいる段階で売りに出されることが一般的です。その理由としては以下の点が挙げられます。
劣化した建物が多い理由
- 維持管理の負担
築年数が経過した建物では、外壁や屋根、シーリングなどのメンテナンスが必要になりますが、それには多額の費用がかかります。この負担を避けるために売却を選択するケースが多いのです。 - 解体費用の回避
建物が劣化していても、土地代としての価値が残っているため、建物付きで売却されることが一般的です。不動産会社も解体費用を負担したくないため、建物の状態が悪くてもそのまま流通させることが少なくありません。
こうした市場の実情を理解した上で、購入する物件の状態を慎重に見極めることが重要です。
購入前に考慮すべき3つのポイント

ポイント1:メンテナンス費用を優先的に計画する
リノベーションを検討する際、真っ先に注力すべきなのは「建物の基礎部分」です。屋根や外壁のメンテナンス費用を確保することが、長期的な安心につながります。その上で、性能向上や間取り変更、デザインの工夫を進めるべきです。
リノベーションにおける優先順位の例
- 屋根・外壁のメンテナンス
- 断熱性能や耐震性能の向上
- 間取り変更やデザイン性の向上
多くの方が「お洒落な空間」を重視しがちですが、最優先は建物の安全性と性能です。
ポイント2:インスペクションの結果を過信しない
インスペクションは参考資料として活用するべきですが、その内容を絶対視することは避けましょう。調査結果をもとにプロと相談し、追加の確認が必要かどうかを判断することが大切です。
ポイント3:信頼できるプロの意見を積極的に取り入れる
建築やリノベーションのプロは、経験に基づいて建物の良し悪しを見極める力を持っています。たとえ「この物件は購入しないほうがいい」という厳しい意見でも、長期的な安心を得るためには耳を傾けるべきです。
リノベーションを成功させるために

私たちは「お洒落なリノベーション」を提供するだけでなく、住まいの安全性や長期的な住み心地を考慮したアプローチを大切にしています。中古住宅を購入する際には、目先のデザインや立地だけでなく、建物の状態やメンテナンス計画を優先することで、安心して暮らせる住まいを手に入れることができます。
まとめ
中古住宅は、価格や立地のメリットがある一方で、不具合や劣化といったリスクが伴います。インスペクションを活用しつつも、プロの意見を積極的に取り入れ、長期的な視点で物件を選ぶことが大切です。屋根や外壁のメンテナンスを優先し、性能やデザインをバランスよく整えることで、理想の住まいを実現する第一歩となります。
私たちSOWAKAでは、中古住宅購入からリノベーションまでのプロセスをサポートし、安心できる住まいづくりをお手伝いしています。ぜひお気軽にご相談ください!
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この記事の監修者

杉山幸治(株式会社SOWAKA)
1977年生まれの瀬戸市育ち。建築工学科を卒業後ゼネコンに入社し、ビルやマンション建築の現場監督からはじまり、気付けば業歴27年。
20代はコンクリートと鉄骨に情熱を注ぎながら資格試験の勉強に没頭し、30代はコンクリートの社寺建築と木造での増築という難易度の高い現場などを経験しているうちに、どんな構造でもディレクションができるようになりました。中古住宅のリノベーションを軸に理想の住まいづくりをする会社の責任者として活動しています。