軒がある暮らしの家づくりのヒント
滋賀県にある話題の観光スポット「ラ コリーナ近江八幡」を訪れました。
「ラ コリーナ近江八幡」は、バームクーヘンが有名なクラブハリエの本拠地としても有名ですが、私が特に惹かれたのは、この建物です。実際に建物自体が観光スポットとなっていて、平日であっても多くの人で賑わっていました。
この独特な建物を設計したのは建築家の藤森照信さん。私自身、藤森さんが造る建物が大好きです。藤森さんの建築に共通しているのは「自然と建築の共生」を感じさせるデザイン。自然の中に溶け込む建物なのに、特徴的な雰囲気がある。すぅーっと引き込まれつつ、建物にあたたかく包まれるような・・つい時間を忘れてしまいます。
こうした個性的な建築って、私たちの日常の暮らしから少しかけ離れているように感じますが、実は住まいづくりへのヒントが沢山隠れています。このブログでは、ラ コリーナ近江八幡の紹介をしながら、その建築要素を取り入れたSOWAKAの事例をご紹介します。
建築の特徴
藤森氏の建築は、自然素材を活かし、風景に溶け込むデザインが特徴で、「ラ コリーナ近江八幡」も色濃く反映されています。
軒下空間の心地よさ
ラ コリーナ近江八幡の建築で特に好きなのは、軒下空間の使い方です。深い軒が作り出す半屋外の空間は、雨や日差しを和らげるだけでなく、人々がゆったりとくつろげる場として活用されています。軒下には木材が使われ、自然の温もりを感じることができるほか、風の通り道としても考慮され、快適な空間が生み出されています。木材を用いた素材使いも相まって、まるで“屋外のリビング”のような心地よさ。


この軒下空間は、決して特別なものでもないと思っていて、私たちの暮らしにも取り入れることができる要素だと考えています。
SOWAKAの施工事例より
草屋根がつくる風景との一体感
「ラ コリーナ近江八幡」の象徴ともいえるのが、屋根一面に芝生が広がる草屋根の建築です。このデザインにより、周囲の自然と調和し、四季折々の景観の変化を楽しめる仕掛けになっています。冬の芝は淡く、夏には一面が鮮やかな緑に。こうした屋根のデザインは、見た目のインパクトだけでなく、断熱性を高め、自然とのつながりを感じさせてくれるポイントの一つです。

雪がパラパラと降る真冬に行ったので、屋根の草がこんな色ですが、夏には真緑な草屋根が楽しめるそうです。
自然素材の美しさと経年変化
建物には、木、土、銅板などの自然素材がふんだんに使われています。特に外壁には焼杉が施され、経年変化によって味わいが増すよう工夫されています。その表情は、風雨を受けながらも風格を増し、「建物も時間を重ねていく存在なんだ」と感じさせてくれます。
有機的なフォルムの美しさ
藤森建築の特徴である、建物の形がまるで木や石、植物のように やわらかく、自然と調和するようなデザイン になっているのが特徴なんです!直線的なデザインを避け、曲線を活かした造形は、まるで大地から生まれたかのような印象を与えます。この曲線が美しい。バームクーヘンに見えてきました(それをデザインしてあるのか)

カフェを楽しめる場所はこんな感じ。全部曲線でした。(雪が降る日だったのでここで食事はできなかった・・)

暮らしに活かせるヒント:建築と自然の共生
この建築の大きなテーマのひとつが「環境との共生」です。草屋根による断熱効果や、自然素材の使用により、エネルギー負荷を軽減しつつ、持続可能な建築を実現しています。草屋根による自然断熱、木や土などの素材選び、風の通り道を意識した設計…。こうした考え方は、私たちが手がける住まいづくりにも活かせる大切な要素です。
まとめ:暮らしと建築をつなぐ視点
「ラ コリーナ近江八幡」は、ただのお菓子屋さんではありません。建築そのものが、人の記憶に残る“体験”になっています。
藤森照信氏の世界観に触れながら、「建築が暮らしを豊かにする」ということを改めて実感しました。
そしてその視点は、私たちが日々取り組んでいる住まいづくりにも、確かに繋がっています。
この記事を書いた人

坂本真由
坂本真由(株式会社SOWAKA)
代表取締役
1984年、熊本県天草市生まれ。
田舎ならではの独特な世界観や価値観に刺激を受けながら育ち、「自分らしく生きる」という人生のテーマを教えてくれた、大好きな地元が私の原点です。
そんな地元を離れたのは、「建築とデザイン」を本格的に学びたかったから。新しい刺激を求めて飛び込んだ専門学校では、建築の基礎から空間づくり、そしてデザインの楽しさを2年間夢中になって学びました。
卒業後は名古屋のビルダーに就職し、現場での経験を重ねながら、より実践的な建築の世界を体感。地元で培った感性と、愛知での学びや経験が、今の私の仕事にしっかりと息づいています。