普段、当たり前だと思っていることの視点を変えて考えると、ふと気付くことがあります。
住まいの提案をしているなかで、「キッチンがない家ってみたことないな〜」と思うことがありました。
住まう人によって家のカタチは様々ですが、どんな住まいにもキッチンはある。
一人暮らしでも二世帯住宅でも、ワンルームマンションにも必ずあるキッチン。
「食べること、住まうこと、着ること」
当たり前かもしれませんが、どんな暮らしにもどんな住まいにも生きていくために「キッチン」は必要であり、大切な場所なのかもしれません。
そんな視点で考えたキッチンは、家の中でも住む人の個性が現れる場所はなのだと感じます。
2030年には家庭の食事が、デリバリーなどのアウトソーシング化されるとも言われていたりと、耳を疑うような話でもありますが、まだまだ家庭の食事を大好きな家で食べられる環境を大切にしていきたいものです。
Contents
理想のキッチンを求めて
マイホームを考えるとき、ときめきポイントの一つが「キッチン選び」
昔は女性にとってのテリトリーだったキッチン選びですが、近年はご夫婦揃って選ばれている方が多いです。
時にはお料理好きな男性の意見で、キッチン選びが進むことも少なくありません。
雑誌で組まれるキッチン特集、いつ見てもワクワクするし理想も膨らみますよね。
どんなキッチンにしよう、このキッチンってどうなの？
嬉しい悩みでもあり、時には本気で悩みはじめることも。
見た目なのか機能性を重視するのか。大事なこだわりの一つでもあります。
使う人の勝手に合わせて
今ではあまり使われなくなった言い方ですが、キッチンのことを「台所」や「お勝手」と言う風習は今でも残っていると思います。
このお勝手と呼び方には、いろいろな説と由来があるそうですが江戸時代以前は、台所で料理するのが妻の役目でもなく使用人の仕事でした。家の中で唯一、使用人が勝手に使える場所、好きに使いなさいと言われていた場所が「お勝手」だとも言われているそうです。
お勝手という呼び名があるキッチンは名前の通り、使う人が使い勝手を工夫し、多くの時間を過ごす場所だからこそ、勝手がいいような空間にしたい想いも込められている気がします。
使い勝手がいいキッチンはもちろんですが、料理をする場所としてだけでなく、「そこに立つ」その瞬間もその人自身が楽しめる場所であることが理想かもしれません。
「家の中でキッチンという居場所が好き」だと言えるようなキッチン。
日々を忙しく過ごす人にとって、億劫になる料理や家事の時間はあると思います。
以前から、「長い時間を過ごす場所だから充実したキッチンを」と言われてきましたが、今は居心地も考えられたキッチンであることが、重要になっている気がします。
システムキッチンを自分仕様に（M邸）
システムキッチンは掃除のしやすさはもちろんのこと、いかに料理を手際良くできるかまで計算されているので使い勝手が抜群です。また大容量の収納が確保されていることで、毎日の家事効率まで考え抜かれています。ただ、オーダーメイドのキッチンに比べるとオリジナルという面では少し物足りない時がある場合もあるかもしれません。
そこで…
M邸のキッチンは使い勝手を考慮したシステムキッチンを採用し、オリジナル感を演出するためにプチオーダーメイドキッチンを計画しました。
狭小住宅をリノベーションをしたM邸は、なるべく部屋を広く見せるために、部屋の中心にLDKを配置することで部屋の広がりを実現しました。そしてLDKの主役となるようなキッチンを検討し始めた頃、おしゃれだけど使い勝手を譲れないという想いでキッチンを探しまわり、WOODONE（ウッドワン）のsu:iji(スイージー) のシステムキッチンを採用しました。木目の優しい扉が、ナチュラルなお部屋と調和されています。
そのシステムキッチンに「Mさんらしさ」をプラスするために、キッチン側面をSUGICOオリジナル、木のモザイク壁を造作しました。
木の素材感を活かした、モダンなデザイン壁
タイル状に切り分けた木材をレンガを積むように配置する「木のモザイク壁」は、モザイクとなる木のピースの高さや太さを変えることで、表面に凹凸をつくっています。そのため、光の当たり具合や、見る場所よって陰影がうまれ、さまざまな表情が楽しむことができます。
このモザイク壁は、大工さんがとても苦労されていた部分。
大工さんは図面を見ながら「目がチカチカする」と言いつつも、お子さまが触った時に怪我をしないため、普段から手入れがしやすいようにと、細い木材1本1本の角を面取りしながら、積み上げてくれました。
出来上がったとき、大工さんと大喜びしたのを今でも覚えています。
お引き渡しから約2年経った今でも、こんなに綺麗に大切に使っていただいているのを拝見できて、スタッフ一同本当に嬉しい気持ちでいっぱいでした。
ギャラリーのようなキッチン（M邸）
マンションリノベーションをしたM邸のキッチンは、部屋の主役ともなるアイランドキッチン。
「リビングダイニング全面を土間にしたい」という要望をお持ちだったM様は、さまざまなこだわりをお持ちでした。その中でも、名古屋にあるギャラリーをイメージし造作したキッチンは、ベルギーBEAL社の左官材モールテックスで仕上げたオリジナルキッチン。
コンロ、レンジフード、水栓から照明まで細かい部分をこだわり抜いたキッチンに仕上がりました。
システムキッチンにはない、SUGICOオリジナルのオーダーメイドキッチンです。
造作したキッチンは、料理するだけでなく雑貨や作家さんの作品を並べたりと、その空間も楽しんでいただいています。そんな暮らしの中にある楽しみが「好きを追求した暮らしの中にあるキッチン」です。
キッチンは特別な場所
使いやすさをとことん重視したキッチン、見た目を重視したオリジナルキッチン。
それぞれの住まいに合うものを、そんな暮らしを大事にしていける。
それが暮らしの中にある幸せに気づける瞬間かもしれません。
毎日献立に悩み、調理する煩わしさを感じるかもしれない。
ですがそれを楽しむことができるキッチンという居心地のいい場所だと、会話も弾む。
キッチンはただ料理する場所だけでなく、そこで料理する自分のことも好きになれるようなキッチンだと素敵だなと思います。
「自分の家のキッチンが好き」そう思っていただけることが、リノベーションした家を長く大切に使っていただけることなのかもしれません。
